ライフ

「ワクチン接種できる」を口にしたばかりに思わぬトラブルに巻き込まれた人々

高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種会場(イメージ、時事通信フォト)

高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種会場(イメージ、時事通信フォト)

 宝くじで一等があたっても誰にも当選を話してはいけない、とよく言われている。当選金が目当ての色々な人が群がってくるからなのだが、新型コロナワクチンをめぐっても、似たようなことが起きつつあるらしい。ライターの森鷹久氏が、ワクチン接種によって思わぬトラブルに巻き込まれた人たちについてレポートする。

 * * *
 医療従事者などに限定されていた新型コロナワクチンの接種だが、一部自治体では高齢者への接種も開始された。テレビでは、実際にワクチンを打った高齢者へのインタビュー、副反応がないかの検証、受けたくても接種予約を取れなかったという市民の憤りなどが報じられているが、一番気になるのは「自分がいつ接種できるのか」ということに尽きる……そんな人も少なくないのかもしれない。

 そうした思惑が原因で、ワクチンの接種をめぐり思わぬトラブルに巻き込まれたという高齢者が存在する。

「受けた、なんて言えないよね。内心では安心できる、なんて思っているけど、世知辛い世の中だからね」

 東京・八王子市在住の無職・越部守さん(仮名・80代)は、4月上旬にワクチンを接種。基礎疾患があったためにいち早く接種を望んでいることを知った越部さんの息子(50代)と孫(20代)がネットを使い予約してくれたという。高齢の近隣住人たちからも電話での予約を試みたという声が聞こえてきたが、予約が取れたのは自身のみ。近くに住む住人に「運が良かった」と話していると、突然、泣きつかれた。

「ご近所さんの奥さんの体が弱くてね、ワクチン接種したいのに予約から漏れちゃったと。早く受けたいから、予約の権利を譲ってくれと言われて、それは流石にできないと断ったけど」(越部さん)

 この件以来、ワクチン接種の予約が取れたことは家族以外には秘密にしていたが、噂はあっという間に広まった。自宅の電話には、話を聞いたという町内会の高齢者から電話がかかってきて「予約の取り方を教えて欲しい」と聞かれたり、どこからか情報が漏れたのか、新聞社やテレビ局からも電話がかかってくる始末。

「恥じたり隠す必要はないと思いつつも、息子と相談してこのことは『秘密』にしようとなってね。接種当日も、息子に迎えにきてもらい、ご近所さんに隠れるようにして家を出た」(越部さん)

 無事に接種が終わり、注射跡が赤く腫れてはいるものの、目立った副反応はないと話す越部さん。接種が複数回に及ぶ可能性もあり、次回の接種でも同様の思いをしなければならないのかと思うと、気が重いと話す。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト