ライフ

東京は“スリバチ”の都 丘に囲まれた凸凹地形に刻まれている歴史

東京の特徴的な谷間や窪地“スリバチ”を散策

東京の特徴的な谷間や窪地“スリバチ”を散策

 武蔵野台地の東端部に位置する東京都心部は、いくつもの川筋によって谷が刻まれた「谷のワンダーランド」だ。東京スリバチ学会会長の案内のもと、元NHKアナ・神田愛花と一緒にスリバチ地形の魅力を探ってみよう。

「東京は“スリバチ”の都です。平坦な台地にこんなに多くの谷間や窪地がある街は全国的にも世界的にも珍しい。四谷、市谷、渋谷など『谷』と付く地名が多く、川の流れが台地を刻んだ谷や窪地など独特の凹地形を私たちはスリバチと呼んでいます」

 東京スリバチ学会会長の皆川典久さんが案内役となり、神田愛花さんと最初に訪れたのは赤坂の薬研坂と円通寺坂。神田さんが驚く。

「1日15キロ、20キロを日常的に歩くほど大の散歩好きで、最近のお気に入りのコースは有楽町から赤坂のTBSさんなんです。でも、こんなえぐられたような急な坂や窪地が赤坂にあるとは知りませんでした!」

 実は皆川さんがスリバチ学会を設立したきっかけが、下り坂と上り坂が向き合う形状の薬研坂だった。

「表通りから裏通りに偶然入った時、プリンをスプーンでえぐったような窪地を目にした瞬間に“スリバチ”という言葉が浮かんだのです。薬研坂は学会の発祥の地なんです。以来、スリバチ状の窪地を求めて活動しており、タモリさんもスリバチに魅せられたお一人なんですよ」(皆川さん)

 同学会では、谷の最上流部である谷頭(こくとう)にあたる3方向以上を丘に囲まれた窪地をスリバチと定義。4方向を囲まれたパーフェクトな窪地を「一級スリバチ」と呼ぶ。その代表が新宿区荒木町の窪地。江戸時代、谷底から湧き出る水を堰き止めて池を造った歴史を持つ。皆川さんは「地形を活かして築かれた江戸の町が現代に引き継がれていることも、凸凹地形からわかります」と説明する。

「谷間に注目すると今まで知らなかった東京の魅力と歴史を感じることができますね。結婚してから主人(バナナマンの日村勇紀)も散歩好きになって一緒に何キロも歩くことが多く、2人でスリバチをめぐる冒険にも出かけたいです」(神田さん)

【プロフィール】
皆川典久(みながわ・のりひさ)/1963年生まれ、群馬県出身。東北大学工学部卒業。2003年に東京スリバチ学会を設立し、地形ブームの先駆けに。『東京スリバチの達人』(昭文社)など著書多数。

神田愛花(かんだ・あいか)/1980年生まれ、神奈川県出身。学習院大学理学部卒業後、アナウンサーとしてNHKに入局。2012年、フリーに転身。情報番組のキャスターやコメンテーターなど幅広く活躍。

取材・文/上田千春 撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2021年4月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《借金で10年間消息不明の息子も》ビッグダディが明かす“4男5女と三つ子”の子供たちの現在「メイドカフェ店員」「コンビニ店長」「3児の母」番組終了から12年
NEWSポストセブン
女児盗撮の疑いで逮捕の小瀬村史也容疑者(37)。新たに”わいせつ行為”の余罪が明らかになった
「よくタブレットで子どもを撮っていた」不同意わいせつ行為で再逮捕の小瀬村史也容疑者が“盗撮し放題だったワケ” 保護者は「『(被害者は)わからない』の一点張りで…」
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《多産DVを語ったビッグダディ》「子どもができたら勝手に堕ろすんじゃないぞ」4男6女の父として子供たちに厳しく言い聞かせた理由
NEWSポストセブン
成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン
2人は結婚3年目
《長髪62歳イケオジ夫との初夫婦姿》45歳の女優・ともさかりえ、3度目の結婚生活はハッピー 2度の離婚を乗り越えた現在
NEWSポストセブン
オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン