芸能

報われない“凡人”好演の松山ケンイチ 抑制効いた“悲哀”に共感の声

(撮影/浅野剛)

難しい役どころを見事に演じた(撮影/浅野剛)

 松山ケンイチ(36才)が主演を務めたボクシング映画『BLUE/ブルー』が、4月9日より公開中だ。SNSなどの口コミには「ボクシングへの熱い想いを感じられる作品」、「生きることに前向きになれる」といった声で溢れ、特に負け続きのボクサーを演じる松山ケンイチに共感する声も多い。その理由について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。

 * * *
 本作は、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(2013年)や『銀の匙 Silver Spoon』(2014年)、『ヒメアノ〜ル』(2016年)などの吉田恵輔監督(45才)が手がけたオリジナルのボクシング映画。監督自身の30年近いボクシング人生から得られた経験を基に、ボクシングに熱い思いをかける3人の男の生き様が描かれる。

 物語のあらすじはこうだ。主人公・瓜田(松山ケンイチ)は、誰よりもボクシングを愛し勝つために努力するが、結果は負け続き。それに対し、体格・才能に恵まれている後輩の小川は日本チャンピオン目前で、瓜田の幼馴染の千佳との結婚を控えている。千佳は瓜田の初恋相手であり、ボクシングの世界に足を踏み入れるきっかけを与えてくれた存在。ところが、ボクサーとしての強さも、恋も、すべて小川が手に入れてしまった。それでも瓜田は小川と千佳を微笑ましく見守り、自身は夢に挑戦し続けるため努力を重ねる。そんな彼らが所属するボクシングジムに、一人の青年・楢崎がやって来る。やがて三者それぞれの闘いのゴングが鳴ることになる。

 この物語は、“ドラマとアクション”によって作品を成立させている俳優たちが素晴らしい。ボクシング一筋ながらも負け続きの瓜田を演じる松山は、好きや努力だけでは勝てない現実を体現。終始浮かべている笑みが、かえって瓜田の悲哀を浮かび上がらせている。圧倒的な強さを誇る後輩ボクサーに扮した東出昌大(33才)は、自身に多くを与えてくれた瓜田を前に葛藤する姿を丹念に演じ、彼らを見守るヒロインの木村文乃(33才)は2人に対し、友として、恋人としての絶妙な距離感を保つことで静かにドラマを盛り上げる。

 また、新人ボクサー役の柄本時生(31才)は、一人の若者が情熱を注げるものに目覚める過程を演じている。ボクシング経験の有無に関わらず観客はいずれかのキャラクターに共感することだろう。どの人物も非常にリアルだ。吉田監督自身が長年ボクシングを続けているとあって、より“ボクサーのリアル”に肉薄していると思う。監督いわく、「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に花束を渡したい気持ちで作った」ということらしい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン