また、そうした長い試験の中で最終選考に残った10名は、互いに仲間意識を持つようになったという。
「ライバルを蹴落とすのではなく、まさに自分自身の資質が問われる試験。だからこそすべてを終えたとき、ファイナリスト全員が自分の同志のように感じられたものです」
それだけに試験の合格者が決まった際には、様々な思いが胸をよぎる。内山さんが「体験を振り返るのに10年かかった」という所以だ。
JAXAは今年の秋に13年ぶりとなる選考の実施を発表しており、以後、5年に一度のペースで新たに飛行士を選抜する予定だ。「理系」に限られていた応募資格も広げられるとされ、それは月軌道でのミッションに参加する予定の日本にとって、宇宙開発への取り組みが新たな段階に入ったことを表していると言えるだろう。
取材・文/稲泉連
※週刊ポスト2021年4月30日号