4月22日にフルモデルチェンジしたホンダの小型SUV「ヴェゼル」。このクラスのSUVは人気で強力なライバル車種も多いだけに、販売競争はますます熾烈になりそうだ。果たして新型ヴェゼルは並み居る競合モデルに勝てるのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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第2世代へとバトンタッチしたホンダのBセグメント(サブコンパクトクラス)SUV「ヴェゼル」。2013年冬にデビューした第1世代はクーペSUV的なフォルムと室内の広さが好評を博し、SUVカテゴリーの年間販売台数首位を4回獲るなどホンダの国内の普通車販売戦線を支えてきた。
一方で、ホンダは人気車種をブランドに育てていくのが伝統的に下手で、モデルチェンジで台数を落としてしまうことが少なくない。第2世代がどのようなモデルに仕立てられるのかは、ファンにとって期待と不安が入り混じる関心事であったろう。
オーソドックスなデザインはボルボに近い?
第2世代の実車を見てみると、クーペルックだった第1世代から大きくコンセプトチェンジした。バックドアの上半分が大きく傾斜したファストバックスタイルという点は第1世代より攻撃的だが、それ以外はきわめてオーソドックスなデザインになった。
ボンネット先端からバックドアの屈曲点までほぼ真一文字の線で結ばれる、SUVとしてきわめてオーソドックスな水平基調。ボディ外板に刻まれるプレスライン(金属の折り曲げ線)やメッキ部品によるデコレーションも激減した。丸型から角型へ、装飾過剰から抑制デザインへの大転換である。
興味深かったのはクルマの見え方。マスメディア向けの新商品発表会が行われたのは屋内。そこではサブコンパクトクラスとはいえ全幅1.79mという寸法を実感させるルックスに見えた。
ところがイベント終了後、ホンダ青山ショールームの前で来るときには飾られていなかった赤いヴェゼルを見た瞬間、「えっ、これ本当にさっき見たのと同じ寸法なの?」と驚いた。そのくらい小さく見える。ボディの面質は非常に豊かなものがあるが、基本的には風景に埋没させる系のデザイン。テイストは全然違うが、志向するところはスウェーデンのボルボに似たものがあると思われた。
居住区と荷室の広さは全長4.3m級のSUVとしては第一級。後席足元空間など、クラス屈指であった第1世代よりさらに広いことが座った瞬間に一発でわかるくらいだった。一方で、デザイン的には外装と同様、非常に抑制的に。旧作の意図的なスペシャリティ狙いではなく、オーソドックスきわまりない造形だった。