スポーツ

青学大野球部のスーパールーキー・佐々木泰が語る「僕がプロに行かなかった理由」

青山学院大学・相模原キャンパスの専用グラウンドで練習する佐々木泰選手

青山学院大学・相模原キャンパスの専用グラウンドで練習する佐々木泰選手

 この春、大学野球の聖地・神宮球場が、1人のスーパールーキーの出現に湧いている。東都大学リーグの名門・青山学院大の1年生、佐々木泰内野手だ。高校通算41本塁打。大学でも入学早々ホームランを量産するスラッガーは、なぜプロではなく大学という進路を選んだのか──。大学野球を長く取材してきたスポーツライターの矢崎良一氏が、本人への直撃インタビューや周辺取材をもとに、スター候補生の実像に迫った。

 * * *
 ササキタイ──その歯切れの良い響きを持つ名前は、“泰然自若”や“天下泰平”といった言葉から、「スケールの大きな人物になってほしい」という両親の願いを込めて付けられたという。その名前に違わぬ堂々たるデビューだった。

 東都大学野球春季リーグ戦。4月5日の立正大戦に「5番・サード」で公式戦初先発、初出場を果たすと、2-2の同点で迎えた8回裏の第4打席、左中間スタンドに高い放物線を描く豪快なアーチを掛けた。

 記念すべき大学1号ホームランでチームを勝利に導くと、続く2戦目の第1打席で、2試合連続となる一発を、今度はライナーでレフトスタンドに叩き込んだ。すかさず、ネット裏に陣取るプロのスカウト陣から「ほぉ~」と驚きの声が上がる。

鮮烈なデビューを飾った青学・佐々木泰選手(写真提供/青山学院大学硬式野球部)

鮮烈なデビューを果たした青学・佐々木泰選手(写真提供/青山学院大学硬式野球部)

 次節の中大戦では、3戦連発こそ阻まれたが二塁打を含む2安打。そして「3番・サード」に昇格した翌週の国学院大戦で、またしても2試合連続ホームラン。

 第4節を終えた4月21日の時点で、6試合4本塁打と驚異的なハイペースでホームランを量産している。1年春のシーズン4本塁打は、東洋大の今岡誠(現・千葉ロッテヘッドコーチ)が1993年に記録して以来で、残り試合でさらに数字を伸ばす可能性もある。

嫌でも意識させられる先輩・井口の大記録

 東都大学リーグの通算ホームラン記録といえば、佐々木の先輩にあたる青学大の井口資仁(現・千葉ロッテ監督)が1996年に24本の最多記録を打ち立て、その後、日大の村田修一(現・巨人野手総合コーチ)や、亜大の松田宣浩(ソフトバンク)ら、プロでも名を成すスラッガーたちがこれに迫るも届かずに4年間を終えた。その井口でさも、1年生の春にはわずか1本塁打だった。

東都大学リーグの通算ホームラン記録を持つ青学出身の井口資仁(現・千葉ロッテ監督)/時事通信フォト

東都大学リーグの通算ホームラン記録を持つ青学大出身の井口資仁(現・千葉ロッテ監督)/時事通信フォト

 佐々木は高校時代にも3年間で通算41本塁打の記録を残してきただけに、大学入学後、取材に来た記者などからよく井口の記録のことを聞かされた。そのたびに「塗り替えることを目標にしてやっていきたい」と漠然と口にしていたが、今後は1本打つたびに嫌でも意識させられる名前と数字になるはずだ。

 高校からプロや大学、社会人に進んだ時、ほとんどの打者が苦労するのが木製バットへの対応だ。高校まで使ってきた金属バットとは違い、ボールをしっかり捉えなければ打球も飛ばない。佐々木は「今もまだ違和感があります」と正直に漏らす。その中での4本のホームラン。

「バットに慣れるというよりも、最初は球威に負けて差し込まれていたものが、少しずつ力で押し返せるようになってきた感じです。でも、まだ力一杯振って打球を飛ばしている感覚はないですね」

 バッティングは力だけではないと言われるが、木製バットを克服し、“マン振り”出来るようになった時には、どんな打球を飛ばすことだろう。

 そんな鮮烈なデビューを果たしたスラッガー佐々木泰とは何者なのか? その経歴と素顔を追ってみた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン