“幻のセンバツ”で慌てたプロのスカウト
高校3年生の最後の夏の大会の時には、すでに進学の意向をプロ側にも伝えていた。
そんな中、幻のセンバツ代表校が出場して行われた8月の甲子園交流試合。明豊高校(大分)戦の9回裏、佐々木は高校野球生活最後の打席で、この大会第1号、自身の高校通算41号となるホームランを打つ。打球が高く舞い上がって、左中間スタンドの最深部に飛び込む高校生離れした豪快な一発だった。
慌てたのはプロのスカウトたちだ。佐々木の育った岐阜が準地元でもあり、本人も「子供の頃からファンだった」と言う中日ドラゴンズのあるスカウトは、苦笑いしながら打ち明ける。
「たしかに地元の選手ですが、早くから進学ということだったので、正直、チェックしていませんでした。あのホームランには驚きましたが、攻守走トータルで、まだ足りないところも多かったですし。負け惜しみじゃないですよ(笑い)。もちろん、4年後の有力候補であることは間違いありません」
甲子園から帰郷後、何球団か再確認の連絡が入ったが、佐々木が翻意することはなく、青学大に進学する。
そこで鍛冶舎に掛けられた言葉がある。
「4年後にドラフト1位で、最高の評価を受けてプロに行け!」
神宮球場に現れたニュースターがどんな4年間を送るのか、今後に注目していきたい。
(敬称略)
【プロフィール】
やざき・りょういち/1966年山梨県生まれ。出版社勤務を経てスポーツライターに。細かなリサーチと“現場主義”でこれまで数多くのスポーツノンフィクション作品を発表。著書に『元・巨人』(ザ・マサダ)、『松坂世代』(河出書房新社)、『遊撃手論』(PHP研究所)、『PL学園最強世代 あるキャッチャーの人生を追って』(講談社)、近著に『松坂世代、それから』(インプレス)がある。
●撮影/内海裕之