松浦が落語にハマっていると見抜いたタチバナは落語通、それも二ツ目の会に通うようなマニアだった。
翌朝、部長と山口の数々の暴言に耐えかねた松浦は、ついに『大工調べ』ばりの威勢のいい啖呵を切る。そこへ現れたタチバナ……。
いくら「働き方改革」が謳われようとも“嫌な上司とダメな部下”問題やサービス残業はなくならない。『影の人事課』は、そんな現代社会で普遍的な共感を得る傑作だ。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年5月7・14日号