料金の一部を寄付にあてる有料配信システムも
こうした中、有料のライブ配信に参加する動物園も出てきている。
北海道の人気動物園・旭山動物園は、これまでに7回、情報誌『どうぶつのくに』『どうぶつえんとすいぞくかん』が構築した「未来につながるLIVE配信 KIFU ZOO」というライブ配信システムを利用して、料金500円のライブ配信を実施した。配信にかかる実費以外を動物園への寄付にあてるというものだ。
「動物園をオンラインで楽しむことで支援するという『どうぶつのくに』の趣旨に賛同して昨年7月29日に1回目を行い、今年の4月25日まで7回実施し、多い時で1回あたり599人の方にご視聴いただきました」(旭山動物園)
寄付額については集計中とのことだ。コロナ禍の収束が見えないだけに、こうした取り組みは今後も各地で広がりそうだ。
クラウドファンディングで餌代1000万円集まる
入園者減による収入源が経営を直撃しかねない民間の動物園では、クラウドファンディング(CF)に挑むケースが目に付く。
クラウドファンディングサイトのREADYFORによると、2020年1年間で全国の動物園、水族館約10施設がCFに挑み、2億円以上の支援が集まったという。
「どこよりも、動物と人との“こころ”の距離が近い動物園」を謳う香川県の民間動物園「しろとり動物園」は今年、トラやゾウなど約75種・350点の動物たちの3か月分の餌代として1000万円を目標にCFに挑戦し、5月14日に最終日を迎え、全国620人から約1075万円が集まった。
CFに挑んだ経緯を担当者に聞いた。
「昨年からのコロナ禍の影響で、休園期間は1か月近くに及びました。(香川県からの休業要請が)解除されてからも、当園にお越しくださるお客さんが多い関西など他府県が、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で人の流れが止まってしまいました。
そのため入園者数が大きく落ち込み、大幅な収入源に悩まされ、動物たちの餌代3か月分の購入のために挑戦させていただきました。ありがたいことに目標を達成できましたので、切り詰めて大切に使っていきながら今後の運営に当たっていきたいと思っています」(同園の広報担当者)
平成30年度は9万7000人ほどだった入園者数が、昨年度は約7万人に減ったというしろとり動物園。今回のCFを経て、支援者との絆を今後の運営にどう生かしていくのか、注目だ。
コロナ禍の収束が全く見通せない中、全国各地の動物園が今後の運営に頭を悩ませている。入園者が減り、収入が落ち込む中でも、動物たちに影響を及ぼしてはいけない。そうした熱い思いで日々の飼育に携わり、動物たちのことが大好きな子どもたちやファンのために、SNSなどを通じて情報を発信し続けている。
苦境が続く動物園・水族館に子どもたちの笑い声や歓声が響く日が一日も早く戻ってくることを願いたい。