ちあきなおみ(写真/共同通信社)

突然の活動休止から29年がたったちあきなおみ(写真/共同通信社)

「別れ」すべては夫のためだった

 1983年には、夏目雅子さん主演の映画『時代屋の女房』の主題歌『Again』を発表。同年、高倉健さん主演の映画『居酒屋兆治』にも出演し、女優としてもその評価を得ていく。

 1988年にはレコード会社『テイチク』に移籍、演歌『紅とんぼ』を発表する。

 この曲は、新宿の片隅でバーを営む女性が店を閉じ、常連客としみじみ語らうシーンを吉田旺さんが詞で描き、船村徹さんが曲をつけてヒットし、11年ぶりに『紅白』に出場となった。

 しかしその3年後、最愛の夫・郷さんを病魔が襲う。肺がんだった。当時、郷さんは54才、ちあきは44才。ふたりの出会いから18年目の試練だった。テレビやコンサートの仕事に追われながらも、彼女は献身的に看病をしていた。

 ふたりを見守り続けてきた古賀さんは「郷えい治あってこその、ちあきなおみ」と語る。

「郷さんは、ちあきさんと出会い、役者を辞めて彼女を支え続けてきた。歌手・ちあきなおみに自らの半生を捧げた郷さんの気持ちに感謝し、その思いに添うようなところが、彼女にありました。

 郷さんの病状悪化とともに、歌番組などで『もうこのスタジオで歌うことは、あまりないかもしれませんが』などと冗談めかして発言していましたが、その実、本気だったと思います。郷さんがいないと歌えなくなるだろうなと、ぼくは薄々感じていました」(古賀さん・以下同)

 その予感は的中した。1992年9月11日、郷さんが55才で帰らぬ人となると、ちあきは表舞台から姿を消したのだ。古賀さんの胸には、ちあきのこんな言葉がいまも残っている。

「私は郷さんのために歌っていたんです。だから、もう歌うこともないし、幸せを感じることもない」

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