新型コロナウイルスのワクチンを接種する河野太郎規制改革担当相(時事通信フォト)

カラフルなバナナ柄のシャツを着てワクチンを接種する河野氏(写真/時事通信フォト)

 企業が従業員数より多く申請するだろうことは想定できたはずだ。おそらくその予想をはるかに上回ったということだろうが、接種会場と医師を用意できる規模の企業なら、子会社や取引先、できれば従業員の家族の分まで確保したいと考えるのではないだろうか。

 思い返せば、予想外、想定外の事態が起きる度に同じ答弁が繰り返されてきた。持続化給付金、支援金に助成金、協力金しかり、政府が事を始める度に混乱が起こり、スムーズに進んだ試しがない。省庁や担当が違えど、同じようなことがこう立て続けに起こると、そこにパターンや流れがあるのではと錯覚してしまうのだ。

 30日には、一時的かと思われた職域接種と大規模接種の新規受付停止が継続された。会見に現れた河野氏のマスクには、葛飾北斎の浮世絵“赤富士”がプリントされているようだ。赤富士は「凱風快晴」という題で、鱗雲が浮かぶ夏の空に、山肌を赤く染めた富士が描かれたもの。時として着用するマスクにメッセージを込めてきた河野氏だけに、この日赤富士を選んだのには何か意味があったのだろうか。それとも晴れ渡る空の下でマスクを外せる日が早く来ることを、無意識のうちに願ったのだろうか。

 会見ではマスクを外し、淡々と状況について説明していた河野氏だが、今後の見通しとして「関係各省の努力を得て、精査している最中。数字を見ながら検討」と述べ始めると肩に力が入っていく。「接種主体の判断に資するように一定の見通しをお示ししたい」と述べつつも、表情は険しくなり肩がどんどん怒っていった。「思うようにいかない、進まない」という気持ちが内心にあるのかもしれない。

 河野氏の怒った肩を見て、「錯覚」は錯覚で終わらないのではないだろうか、そんな気がしてきた。これまでのように、政府が事を始めるとまた同じようなパターンに陥るというのが現実になる気がしてならない。

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