大島さんは「がんになっても、家族に対するスタンスは変えない」と話す一方で、家族へのあたたかいまなざしが言葉に表れていた。
「(がんがわかってから)子供たちは変わりましたね。洗濯や炊事をするようなヤツじゃなかったが、どんなに遅く帰ってきてもやるようになりましたからね。子供たちの中では大きな転機になったと思う。ただ、そこでボクがこれまでと違う接し方をするとバランスが壊れると思うから、それはしないようにしています。
子供たちも“このクソオヤジが”と言っていますが、がん患者だからといって特別扱いしてはいけないという葛藤があるんだと思う。家族には、家族の気苦労がある。次男坊が“もっと早く気がついてやれればよかった”と家内に泣きながら話したそうですが、誰のせいでもないのに家族が後悔したり心配することになる。そこは申し訳ないと思う。ただ、なるようにしかならないのだから、流れる雲や川に身を預けたほうが楽だというのがボクの考え方です」
大島さんは「ボクには病気と闘っている気持ちはまったくない。もちろん早く小さくなってくれないかなと思うことはあるが、がんをやっつけるために強い薬を飲むというような気持ちはない。最低限のやるべきことをやり、なるようになる。そんな気持ちですね」と最後まで自然体で話していた。ご冥福をお祈りしたい。
■取材・文/鵜飼克郎