芸能

新たなブレイク発信地「BLドラマ」、“出身俳優”が夏ドラマを席巻中

竹財輝之助

『ポルノグラファー』に出ていた竹財輝之助は『ナイト・ドクター』に出演中

 若手や中堅俳優がブレイクするきっかけとして今、「BLドラマ」が注目を集めている。この夏ドラマでは、BLドラマに出演した俳優たちの躍進が目立っているのだ。その背景とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 今、若手や中堅俳優たちの間で「ブレイクの発信地」「オファーが来たら絶対に受けるべき」と言われているのがBLドラマ。BLは「ボーイズラブ」の略で、男性同士の恋愛がテーマのコンテンツを指す言葉であり、当初は一部のファンに向けたものでしたが、2010年代後半あたりから地上波のドラマにも採用されるようになりました。

 主な作品を挙げていくと、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)、『きのう何食べた』(テレビ東京系)、『ポルノグラファー』(FOD、フジテレビ系)、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)は、いずれも深夜帯ながら熱狂的な支持を獲得。さらに、前3作は映画化され、後1作は今年の「ギャラクシー賞 マイベストTV賞 グランプリ」を受賞して話題を集めたばかりです。

 そして驚かされるのは、これらのBLドラマ出身俳優が夏ドラマで躍進を果たしていること。『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』主演の赤楚衛二さんは、『彼女はキレイだった』に出演し、相手役の町田啓太さんも6月27日放送の単発ドラマ『嘘から始まる恋』(日本テレビ系)に準主役で出演しました。

 また、『ポルノグラファー』の竹財輝之助さんは『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)、猪塚健太さんは『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)に出演中。“月9”と“日曜劇場”という両局を代表するドラマ枠にレギュラー出演しています。

 次に『きのう何食べた』の西島秀俊さんは、『シェフは名探偵』(テレビ東京系)で主演。また、西島さんと内野聖陽さんは朝ドラ『おかえりモネ』(NHK)にも出演しています。

『おっさんずラブ』で一躍主演級に躍り出た田中圭さんも、今夏は『ナイト・ドクター』に出演中。同じく『ナイト・ドクター』に出演中の北村匠海さんへの演技評価が高まったのは、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)で「同性カップルを演じたころから」という声もあります。

 さらに夏ドラマではありませんが、『おっさんずラブ』に出演した林遣都さんが主演を務めた昨年放送の単発ドラマ『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)が今年6月、「ギャラクシー賞 テレビ部門大賞」を受賞しました。

 なぜBLドラマ出身俳優の躍進が続いているのでしょうか。

温かく見守り続けるファン女性たち

 BLが一部のファン女性向けから、女性全般が楽しむコンテンツに広がるきっかけとなったのは『おっさんずラブ』。春田創一(田中圭)を想う牧凌太(林遣都)と黒沢武蔵(吉田鋼太郎)の一途な恋心が女性たちの心をつかみました。昭和時代のピュアなラブストーリーに回帰するようなシーンの連続で、俳優たちへの好感度もグッと上がったのです。

 かつて同性愛者の役柄は、変わり者として描かれがちだったため、オファーを受けたがらない俳優が多かったものの、『おっさんずラブ』以降は「むしろチャンス」というイメージが強くなりました。繊細な感情表現などで演技力を見せる絶好機であり、「人を愛するということ」「無償の愛とは」などを視聴者に考えさせられる役柄に変わったのです。

 繊細な感情表現を見せることで、視聴者だけでなくテレビマンからも演技力を評価され、次のオファーにつながりやすいのも躍進のポイント。実際に女性相手のラブストーリーはもちろん、刑事や医療などの定番ジャンルなどへの出演チャンスも広がっています。

 また、BLドラマのファンは、放送終了後もそのキャラクターを愛し続ける傾向があり、演じた俳優を温かく見守り続けてくれることもメリットの1つ。放送終了後も、「応援し続ける」という人が多く、だからこそ今夏のようにゴールデン・プライム帯の作品に起用されやすいのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト