今後はゴールデン帯での放送も視野に
この流れは元を正せば、BLドラマの制作サイドが、「見た目や人気より、演技力をベースに若手・中堅俳優を選んでオファーをしている」ことの表れ。繊細な演技のできる俳優を見極めてチャンスを与え、俳優がそれに応えることによって躍進につながっているのです。
たとえば田中圭さんは『おっさんずラブ』の出演時、すでに最高クラスのバイプレーヤーでしたが、主演はほとんどなく、一般的にも「顔と名前が一致するかどうか」というギリギリのラインでした。その状態でも思い切って起用した制作サイドの目利きが現在の人気と活躍の出発点だったのです。
また、現在27歳の赤楚衛二さんは、それまでゴールデン・プライム帯のドラマにはゲスト出演ばかりでしたが、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のあとにレギュラー出演が決定。さらに秋放送予定の『世にも奇妙な物語’21秋の特別編』で主演を務めることが発表されています。現在34歳の猪塚健太さんにも同様の変化が見られますし、「いかにBLドラマが若手・中堅俳優のターニングポイントになっているか」がわかるでしょう。
最後に彼らの躍進を語る上で、もう1つ忘れてはいけないのは、制作サイドがBLドラマを特別なものではなく、普通のラブストーリーとして真面目に描いたこと。これによって、時代の流れである多様性の尊重を表現するとともに、異性愛のドラマに慣れていた人々にとって新鮮であり、むしろ「ひさびさに純愛を感じる」ものになりました。
まだ深夜帯での放送ばかりですが、ここで挙げた若手・中堅俳優たちの躍進によって、近いうちにゴールデン・プライム帯でBLドラマが見られる可能性は十分ありそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。