国際情報

米軍トップに「クーデター男」と叩かれたトランプが「左翼め!」

トランプ氏と蜜月だった頃のミリー氏。話す時もボスにならってノーマスク(AFP=時事)

トランプ氏と蜜月だった頃のミリー氏。話す時もボスにならってノーマスク(AFP=時事)

 ドナルド・トランプ前大統領の周辺がまた慌ただしくなっている。米軍100万人の頂点に立つミリー統合参謀本部議長が、今年1月6日のトランプ支持派による連邦議会議事堂乱入事件をクーデターと呼び、「トランプ氏がそそのかした違法デモは、1933年2月のドイツ国会議事堂放火事件と同じだ」と批判していたことが明らかになったからだ(同事件を契機にヒトラーは全権委任法を制定し、ドイツの議会制民主主義は崩壊する)。

 これに激怒したトランプ氏は長文のステートメントを発表。「嘘八百もいい加減にしろ! 私はクーデターを最も起こさない人間だ」「ミリーという男は左翼過激派分子がアメリカと星条旗を攻撃するのをただ見ているだけだ」と切って捨てた。さらに、「ミリーを統合参謀本部議長にしたのは、この私だ。マティス国防長官や前任のダンフォース統合参謀本部議長の反対を押し切ってしてやったんだ。ミリーほど国防総省で尊敬されていない人間はあまりいない」と激しい個人攻撃を加えた。

 ミリー氏の発言は、近く発売されるワシントン・ポストの2人のピューリッツァー賞記者が書いたトランプ本、『アイ・アローン・フィックス・イット』(俺にしか直せない)に出てくる。CNNや雑誌「ニューヨーカー」がすっぱ抜いた。ミリー氏は、乱入事件から数日後、軍・警察幹部を集め、「奴らはクーデターを計画しているが、成功はしない。軍や中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)の手を借りずにクーデターなど成功するはずがない。銃を持っているのは我々だ」と檄を飛ばしたという。

 ミリー氏はマサチューセッツ州ウィンチェスター生まれ。父親は硫黄島の激戦の生き残りで、兄はノルマンディー上陸作戦に参戦したという軍人一家。ウエストポイント陸軍士官学校を優等で卒業後、プリンストン大学大学院で修士号を取得している。

「ペンタゴンではマティス氏と並ぶ文武両道のインテリ将軍と言われていた」(米主要メディア軍事担当記者)

 一方で、欧州軍最高司令官が順当と見られていたところをトランプ氏に見初められて抜擢されたことも事実だ。2020年6月には、トランプ氏がホワイトハウス前に集合した反政府デモを挑発して近くの教会に徒歩で現れた際に同行。「軍の最高首脳が政治活動に関わるのは違憲行為だ」と激しく糾弾された。ところが、バイデン政権になった2021年6月には、陸軍士官学校で「批判的人種理論」(アメリカの政治・社会制度はすべて白人基準で出来上がっているという理論)を教えていると親トランプ派から追及されたのに対し、「いま社会で起きていることを軍幹部候補生が学んでどこが悪い。私は士官学校でマルクスもレーニンも毛沢東も勉強した」と反論し、リベラル派にすり寄った。「時の大統領とうまく話を合わせる風見鶏」(下院軍事委員会の共和党議員)という批判もある。

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン