インスリン・オフ療法により、1か月後にはHbA1cは7.3%に下がり、体重も4kg減った。3か月後には同6.8%と、6%台で安定し、体重は初診時より14kg減って63kgになった。

「治療の途中には中だるみもありますが、体重を診察前に計測するので、すぐにわかりました。何を食べたか聞くと、『お土産にもらったお菓子を食べ過ぎた』などと、たいてい原因がわかります」

 インスリンのように一気にゼロにはできないが、インスリン・オフ療法で内服薬の減量も可能だ。

 50代の男性Bさん(身長172㎝、体重85kg、1度肥満)はHbA1cは7.9%、血糖値は空腹時159と高く、メトホルミンを1日2錠、降圧剤も1種服用していた。

「3か月経っても血圧が高いままだったので別の降圧剤を追加しましたが、その後、徐々に改善し、1年後に降圧剤を1種に戻せました。2年後には体重が10kg減少し、HbA1cも6.3%に下がったので、メトホルミンも終了できました。3年後には降圧剤も終了し、断薬に至りました」

 インスリン・オフ療法は糖質制限を伴うため、苦労する患者もいる。

「『米を食べられないなら死んだほうがましだ』という中高年の患者さんが多いのは事実です。そういう方に急な変化を促すのは難しいので、年単位で治療方針を立てていました。糖やインスリンで動脈硬化を引き起こした例を伝えたり、ご家族の協力を仰いだりして、最終的にはご飯をほんの1口程度に減らせた方もいらっしゃいました」

【プロフィール】
水野雅登(みずの・まさと)1977年生まれ。杏林大学医学部医学科卒業。内科医。日本糖質制限医療推進協会提携医。著書に『糖質オフ大全科』『糖尿病の真実』など。

※週刊ポスト2021年8月13日号

◆当初、タイトルに「糖尿病専門医」と記しましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします。(2021年8月8日18時08分追記)

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