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野際陽子さんが娘へ「苦しい思いをさせてごめん。気づかなくてごめん」

娘の真瀬樹里が野際陽子さんからの言葉を振り返る(写真は2008年ごろ撮影/事務所提供)

娘の真瀬樹里が野際陽子さんからの言葉を振り返る(写真は2008年ごろ撮影/事務所提供)

 愛する家族が遺してくれた「言葉」は、今も心に生き続けている──。野際陽子さんからもらった言葉ついて、娘の真瀬樹里が振り返る。

 * * *
 20歳の誕生日に母から手紙をもらったんです。「20年と28週間前にあなたを身ごもった日から、私はずっとあなたのことを私の宝と思い、神からの最高の贈り物と思って、あなたの存在を神に感謝し続けてきました。生まれてきてくれて、私の娘としてこの世に存在してくれて本当に本当に有難う」と書かれていました。

 何かあった時でも、母に愛されていたことを感じることができる。その言葉がこれまでずっと支えになっています。

〈NHKアナウンサーを経て1963年に女優デビューした野際陽子さんは1973年に俳優の千葉真一と結婚し、現在、女優として活動する真瀬樹里が生まれた。38歳での出産は当時「芸能人の出産最高齢記録」とされた〉

 私は小中学生の頃によく人間関係に悩むことがありました。すると母から「相手に自分がどう思われていようが、相手に嫌われていようが、あなたは相手を受け入れていなさい」と言われました。まずは相手自身を受け入れるという姿勢でいれば、相手もいつか歩み寄ってきてくれるから、と。これは仕事をしていく上でも、人間関係でも、私が生きていく上で長らく役に立った教えです。

 母は芸能活動については反対でした。5歳の時に父(千葉真一)の舞台に誘われて、私も役者をやりたいと母に伝えたら、幼稚園の規則で芸能活動を禁止されていたから絶対ダメだと許してくれませんでした。どうしても仕事を始めたいから転校すると言ってもダメで、「俳優になるのは高校を卒業してから」の一点張りでした。私が女優としての仕事を始めたのは大学に進学してからです。

 母は、「自分さえ輝いていれば、まわりは引き寄せられてくる」「素敵な女優になる前に素敵な女性になりなさい」と常に話し、多くのアドバイスをもらいました。

 人としての在り方や礼儀などにとても厳しい母でした。

 私が30歳を過ぎた頃に、70歳前後の母と本音で言い合ったことがあります。母に甘えたいのに甘えられなかったことを泣きながらぶつけました。母は「苦しい思いをさせてごめん。気づかなくてごめん」と謝りながら抱きしめてくれました。

〈テレビドラマを中心に活躍した野際さんは、2016年秋からドラマ『やすらぎの郷』の撮影に参加していた時に肺腺がんが再発。2017年5月7日まで撮影を続行し、翌日に肺炎を併発して入院。1か月後の6月13日に81歳で死去した〉

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