この先、最もハイリスクなのは、これまでアメリカやアフガン政府に協力してきた人々だろう。タリバンは表向き平和的な権力移行を主張しているが、背後では米国への協力者の名前や電話番号、家族構成などのブラックリストを作成しているといわれる。
私の友人である現地コーディネーターは以前、日本の国際協力機構(JICA)のスタッフとして働いていた。彼は私に対してこう話した。
「タリバンは外国人と仕事をしていた人物を把握しており、真夜中に家を訪問して暗殺している。自分もタリバンから追われる身で、南部のカンダハールからカブールに逃げてきて潜伏生活をしています。タリバンに見つかったら殺されるから日本に亡命したい」
事実、8月18日に、ドイツメディアに所属するジャーナリストの家族がタリバンに殺されている。
規律の行き届かない末端のタリバン兵が暴走して、住民に危害を加える可能性もあり、予断を許さない。
長年の取材経験から、アフガンの人たちは計画性に欠け、明日どうなるかを考えない国民性を強く感じる。おそらく、タリバン自身も先行きをあまりわかっていないはずだ。
だからこの先、アフガンがどっちに転ぶかは本当にわからない。いまはまだ「嵐の前の静けさ」なのである。
【プロフィール】
横田徹/1971年茨城県生まれ。1997年のカンボジア内戦をきっかけにフリーランスの報道カメラマンとして活動を始める。その後、世界各地の紛争地を取材。9.11同時多発テロの直前、アフガニスタンでタリバンに従軍取材し、2007年から2014年まで、タリバンと戦うアメリカ軍に継続的に従軍取材を行う。
※女性セブン2021年9月9日号