日本側で渡り合える人物は?

 日韓関係は慰安婦問題、徴用工問題、竹島問題、火器管制レーダー照射問題などで長く停滞し、文在寅政権の反日的な政策によっていっそう冷え込んでいる。

 だが、過去の歴史にとらわれない李代表なら、ニュートラルなスタンスで新しい日韓関係を定義できるはずだ。実際、朝日新聞(7月16日付)のインタビューで「若い世代は前向きな行動が取れると思う」と話している。多くの若者にとって今の韓国は、就職率・就労率が低くて労働環境も劣悪な「ヘル(地獄)コリア」だ。日本と異なり、若者の多くは自国を嫌って海外に出たがっている。李代表はそういう若い世代の声を代弁する受け皿になって支持を集め、“賞味期限”が切れなければ2027年の大統領選挙で最有力候補になると思う。

 一方、日本には李代表と対等に渡り合えそうな政治家が見当たらない。英語が不得意で6月のG7サミットでも各国首脳とコミュニケーションがとれず蚊帳の外だった菅義偉首相では、到底無理だ。年齢も李代表の倍の72歳である。

 次期首相候補として名前が挙がっている中で最も若いのは40歳の小泉進次郎環境相だが、今のところ実に浅薄な“ポエム大臣”でしかない。河野太郎行政改革・ワクチン担当相は、英語は話せても58歳だし、新型コロナワクチン供給で“加減乗除”さえできないような能力には疑問符を付けざるを得ない。岸田文雄前政調会長と石破茂元幹事長は64歳、ハーバード大学の公共政策大学院ケネディスクール出身でマッキンゼーにもいた茂木敏充外相は、もう65歳である。

 起業家出身で若手の元榮太一郎参議院議員あたりなら経歴から見て李代表と話が合うかもしれないが、彼もすでに46歳だ。日本は真剣に政界の世代交代を進めて若い優秀なリーダーを生み出さなければ、韓国はもとより世界から相手にされなくなってしまうだろう。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は『世界の潮流2021~22』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』等、著書多数。

※週刊ポスト2021年9月17・24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト