人の人生はオモチャやゲームじゃない

「20年もつき合って、何も残らないなんて」

 その行為に刑事罰などあるわけないが、「あんまりだ」「許せない」という道義的な問題は間違いなく存在する。利用するだけして恋愛を言い訳に「はいサヨナラ」ではあまりに酷い

「他人の人生に乗っかる自分も悪かったんです。どこかで夢を託した部分もあるというか、私自身、なんでもない短大生で会社員、田舎の冴えない女でしたから」

 富田さんのことを指すわけではないが、自己肯定感が低いと自分のためではなく相手のために恋愛をしてしまう。

「次に会ったら殺しちゃうかもしれませんね。だから結婚とか、私に知らないところでお願いします」

 物騒な話だがこれが本音だろう。恋愛はお互い様とはいえ、他人の人生はオモチャやゲームではないのだ。それが20年ともなれば無責任かつ悪質極まりない。責任とって結婚しろと他人が言えるものではないが、けじめはつけるべきだ。出産というリミットのある女性の人生を台無しにしておいて自嘲で済ませ、それをネタに罰ゲームをネット生配信して遊ぶのはやはりおかしい。実際、ごく一部の熱狂的な信者はともかく多くは否定的だ。そうした行為をネタで片付ける、もうそんな時代じゃない。

「他人の人生に乗っかる自分も悪かった」

 今回、この言葉も筆者には印象的だった。逆に言うと他人を自分の人生に乗っけるのが上手い輩もいる。スーパースターとはそういうものだが、他人を自分の人生に乗っけるのが上手い「だけ」の輩もいる。生まれながらに他人を利用して捨てることをなんとも思わない危険人物もいる。これは男女に関わらず気をつけたほうがいい。

 時代は確実にアップデートしている。もう芸の肥やしなんて言い草は通用しなくなり始めている。女性も声を上げられる時代、ユーチューバーのワタナベマホトや2.5次元俳優の小澤廉、サッカー選手の道渕諒平などからDVを受けたという告発も後を絶たない。昔なら許されたことも、現代では悪質であると暴かれ、正当に追い詰める社会に変わり始めている。他人を玩具のように弄ぶ輩に鉄槌が下るまっとうな社会に。

 10年も20年も女性を利用したあげくに捨てる行為。悲しいかなそれが無くなることはないだろうが、こうして女性が「間違っている」と声を上げることもまた価値観の変容につながる。もう「ネタ」では済まされないのだ。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

関連記事

トピックス

NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン