政治とは常に弱者を優先するものだと信じている。しかし、彼女の主張には、個々の弱者よりも国家、国を大切にしていることがひしひしと伝わってくる。ネットでかなり人気のようだけれど、Twitterでは出馬会見で膳場貴子キャスターに質問され、顔を強張らせる場面が拡散された。
自身の「さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のふりをして少しでも得をしようとか、そんな国民ばかりいたら日本は滅びる」という過去の発言について見解を求められたのだ。生活保護の不正受給問題について議論する中で述べたものと説明したが、例えそうだったとしても、政治家なら社会全体を受け止める必要がある。不正受給に至ってしまった人たちをどうするのか考えるべきであって、「さもしい」と切り捨てる冷たさはリーダーとは程遠い。
女性は長らく弱者であった。いや、今でもまだまだ弱者である。日本にも早く女性のリーダーが現れて欲しい。同時に、女性がみんな同じ思想、同じ理想を持っているとはもちろん思っていない。心の中が全て同じだとしたら恐ろしい。しかし、高市早苗氏の主張はその恐ろしさに向かっている気がしてならない。
リーダーとなる女性には、今まで弱者の立場を強いられてきたその格差を縮めようとする気持ちがあって欲しいと願うのは、そんなに大それたことではないでしょう?
◆甘糟りり子(あまかす・りりこ)
1964年、神奈川県横浜市出身。作家。ファッションやグルメ、車等に精通し、都会の輝きや女性の生き方を描く小説やエッセイが好評。著書に『エストロゲン』(小学館)、『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)など。最新刊『バブル、盆に返らず』(光文社)では、バブルに沸いた当時の空気感を自身の体験を元に豊富なエピソードとともに綴っている。