青木さんは悲しみにどっぷりと浸かりながら書き残した妻との思い出を『妻を看取る』という本にまとめて今年5月に出版した。
「一連の作業を経て、憑きものが落ちたように気持ちがすっきりしました。お元気なかたであれば、ご主人と過ごした場所に足を運んで、そのときの自分の気持ちやご主人の言葉などを思い浮かべ、夫婦でした経験を追体験するのもいいでしょう。思い出を文章に残すことも、悲しみを癒すことにつながるはずです」
森田さんもまた、夫婦の思い出の場に戻ることで癒され、再起のきっかけをつかんだ。
「泣き暮らしてふと気がつくと、お花が咲き乱れる春だったんです。『ああ、私にはお父さんと造ってきた庭があるじゃないか』と、以前にもまして花作りに力が入るようになりました。『お花が待っている』と思ったら、元気が出てきたし、なによりも夫が残してくれた庭は守っていかなければと強く思った。まさに私はお花に助けられて、悲しみのどん底から這い上がることができました。
夫が好きだった野菜作りにも挑戦しました。お花と比べて、念入りな消毒や細かい手入れが必要だから、私にはとても無理だと思っていたけれど、やってみたら何とかなるものですね。いまはキッチンガーデンのところにちょっぴり野菜作りのコーナーがあります。これからの季節、大根や春菊など、冬物の野菜の種をまく予定です」(森田さん・以下同)
“おひとりさま”になって14年経つが、いまも毎日武さんとの対話を欠かしたことがないという。
「お父さんがよくしてくれたからいまのガーデンがあるんだよ、という気持ちでいつも感謝の気持ちを伝えています。時々は『お父さん、お願い』って願い事をして娘に笑われますけど、それでも毎日の終わりには、『お父さん、今日も一日無事だったよ』と報告しています」
撮影/山口規子
※女性セブン2021年10月14日号