ライフ

半蔵門ミュージアム【1】大日如来坐像を見た壇蜜「意外にふくよか」

『不動明王坐像』木造、漆箔 平安~鎌倉時代(12~13世紀)/光背・台座 康正作 1606(慶長11)年。醍醐寺普門院の旧本尊。江戸時代に修理されたことが台座の墨書銘に記されている

『不動明王坐像』木造、漆箔 平安~鎌倉時代(12~13世紀)/光背・台座 康正作 1606(慶長11)年。醍醐寺普門院の旧本尊。江戸時代に修理されたことが台座の墨書銘に記されている

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・千代田区の半蔵門ミュージアムの第1回。2人が全方位から拝む運慶作の『大日如来坐像』を鑑賞する。

山下:天才仏師・運慶の作品と推定され、平成16年に“運慶の仏像が新たに発見!”と大ニュースになったのが、この『大日如来坐像』です。

 平成20年にはニューヨークのオークションに出品されて“運慶が海外流出か!?”とさらなる騒動に発展しましたが、真如苑の所蔵となり、現在は半蔵門ミュージアムに無料で常設展示されています。

壇蜜:どこから運慶作と考えられるのでしょうか。

山下:真横から見ると印を結ぶ手と胸の間に空間があり、奈良・円成寺の大日如来坐像(国宝)などに見られる運慶オリジナルの作風です。

 底板をはめずに像の内部に底板を彫り残す「上げ底式内刳り」も運慶の技法。X線調査では像内の納入品に栃木・光得寺の大日如来坐像との共通点も確認され、2階のマルチルームに像の底板やX線の画像なども展示されています。

壇蜜:仏像と対面する空間と知識を得る場が別々に設けられて、五感が迷子にならないのがありがたい。正面から拝む仏像を360度全方位から拝めることで運慶の作風もよくわかって背中がやさしいな、意外にふくよかなんだな、などたくさんの発見もあります。

山下:人々を救うため大日如来から遣わされた不動明王。穏やかな表情の大日如来と比べ、『不動明王坐像』はやや険しい表情ですね。

壇蜜:怖い姿で人々を諫めるのは秋田のなまはげに通じる気もして、秋田出身としては親しみを感じます。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●半蔵門ミュージアム
【開館時間】10時~17時半(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜・火曜(祝日、振替休日の場合も休館)、年末年始、臨時休館あり
【入館料】無料
【住所】東京都千代田区一番町25

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン