芸能

現役組員が語る「本物だと思うヤクザ映画」 圧倒的人気は『仁義なき』

やはり圧倒的1位は…(写真/共同通信社)

やはり圧倒的1位は…(写真/共同通信社)

 ヤクザ映画は“一般人”にも人気だが、本当の評価を知るにはヤクザに話を聞くのが筋というものだ。そこで、ライターの鈴木智彦氏が現役組員100人にアンケートを実施。鈴木氏が綴る。

 * * *
【問】「本物だと思うヤクザ映画は?」

・1位『仁義なき戦い』シリーズ 43票
・2位『竜二』 8票
・3位『昭和残侠伝』シリーズ 7票
・4位『仁義の墓場』 6票
・4位『沖縄やくざ戦争』 6票
・6位『悪名』シリーズ 5票
・6位『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』 5票
・8位『網走番外地』シリーズ 4票
・9位『山口組外伝九州進攻作戦』 2票
・同率10位 それぞれ1票 『すばらしき世界』、『激動の1750日』、『山口組三代目』、『県警対組織暴力』、『修羅の群れ』、『アウトレイジ』シリーズ、『ソナチネ』、『極道の妻たち』シリーズ、『博奕打ち 総長賭博』、『やくざと抗争』、『ヤクザと家族 The Family』、『制覇』、『北陸代理戦争』、『バカ政ホラ政トッパ政』

 実を言えば最初は『仁義なき戦い』『仁義なき戦い 広島死闘篇』『仁義なき戦い 代理戦争』『仁義なき戦い 頂上作戦』『仁義なき戦い 完結篇』の5作が圧倒的人気すぎて、ほぼ半数になってしまった。その後のシリーズも人気が高く、映画マニアに叱られるのを覚悟でひとまとめにして集計した。

 俳優としては高倉健が圧倒的な人気なのに、作品評価だとベタベタの任侠映画の評判が振るわない。単にあまり観られていないせいかもしれない。

 他の映画もシリーズはまとめてある。若い組長、幹部、組員にも圧倒的に昔のヤクザ映画が人気である。奮闘したのは『すばらしき世界』と『ヤクザと家族 The Family』で、どちらもコロナ下で封切られたにもかかわらず、10人以上が劇場に足を運んでおり、「ヤクザ映画で初めて泣いた」(関西独立団体幹部)と高評価だった。

 取材にギリギリまでかかってしまったのだが、結果を集計してみると相応に面白い。ヤクザの肉声を聞いていると、やっぱり自分たちを題材にした映画には興味があり、映画好きのヤクザが多い印象があった。

 自ら東興業、通称、安藤組を設立し、横井英樹襲撃事件を起こして逮捕され、引退して映画俳優に転身した安藤昇は、生前、こう話していた。

「題材がヤクザというアウトローだけで、ヤクザ映画の主人公はみな自分の掟と道徳を持っていた。行動が適法的ではないだけで、人でなしではなかった。でもヤクザはしょせん裏社会の人間だから、表社会の人間のようにそれを誇ったりしない。しょせんヤクザは悪党だ。でもよ、自らを悪人と自認しているだけ、アウトローはまともな人間だと思わないか?」

 高倉健が圧倒的に人気なのは、まさに安藤のいう通りの理由だろう。また『仁義なき戦い』がヤクザに高く評価されたのはヤクザ云々ではなく、人間そのもののドラマだからだろう。

 日本の中で拳銃を振り回し、殺し合いを演じてリアリティのある人種は、ヤクザと警察官と自衛隊員だけである。ヤクザはサラリーマン同様の組織人だが、公務員のような不自由さはない。もっと面白いヤクザ映画はきっと作れる。

【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。近著に『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館文庫)。

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

石破茂・首相の退陣を求めているのは誰か(時事通信フォト)
自民党内で広がる“石破おろし”の陰で暗躍する旧安倍派4人衆 大臣手形をバラ撒いて多数派工作、次期政権の“入閣リスト”も流れる事態に
週刊ポスト
1999年、夏の甲子園に出場した芸人・とにかく明るい安村(公式HPより)
【私と甲子園】1999年夏出場のとにかく明るい安村 雪が降りしきる母校のグラウンドで練習に明け暮れた日々「甲子園を目指すためだけに高校に通った」 
女性セブン
クマ外傷の専門書が出版された(画像はgetty image、右は中永氏提供)
《クマは鋭い爪と強い腕力で顔をえぐる》専門家が明かすクマ被害のあまりに壮絶な医療現場「顔面中央部を上唇にかけて剥ぎ取られ、鼻がとれた状態」
NEWSポストセブン
小島瑠璃子(時事通信フォト)
《亡き夫の“遺産”と向き合う》小島瑠璃子、サウナ事業を継ぎながら歩む「女性社長」「母」としての道…芸能界復帰にも“後ろ向きではない”との証言も
NEWSポストセブン
ジャーナリストの西谷格氏が新疆ウイグル自治区の様子をレポート(本人撮影)
《新疆ウイグル自治区潜入ルポ》現地の人が徹底的に避ける「強制収容所」の話題 ある女性は「夫は5年前に『学習するところ』に連れて行かれ亡くなりました」
週刊ポスト
会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン