高倍率の部屋を「値上げ販売」
一方、販売側はこのルールを逆手にとって人気を演出する。
例えば100戸のマンションを売り出す場合に、予行的な販売活動(「予告広告」と表示した上での広告と販売)で買い手がつきそうな10戸だけを選んで「第1期1次」販売を行い、それを「即日登録完売」させてしまう。
さらに次の10戸を「第1期2次」として同様に「即日登録完売」させ、広告上で「連続即日完売の人気物件」と表現することも可能だ。これは最近、東京都港区の白金エリアなどのタワマンで散見される手法だ。
日本人の「他の人も購入している人気物件」であれば、「これは買ったほうがいい」と考えやすい習性につけ入る販売手法である。マンション業界では常套手段になっている。
「期分け」による販売手法は、売り主側にとってもうひとつメリットがある。それは、販売価格の値上げである。
例えば、同じような住戸を第1期では5000万円で販売していたが、人気が集中して高倍率になったので第2期では6000万円で売り出すことも「期分け」をしていれば可能である。
逆に値下げをすることも理論的には可能であるが、実際にはほとんど行われない。その理由は、第1期の購入契約者から「なぜそんなに安く売るのか」というクレームがきた時に対応が難しくなるからだ。
ただし、値上げというのはマンション市場がよほど好調な時にしか行われない。ここ最近ではコロナ特需で売れ行きが好調になった、湾岸エリアのタワマンでよく見られた現象ではある。