野村克也氏の思いとは(写真/共同通信社)
野村ヤクルトで代打の切り札として活躍し、2007年からは楽天の監督となった野村氏のもとでヘッドコーチを務めた橋上秀樹氏は、高津氏の「投手陣の整備」に野村イズムを見たと指摘する。
「野村監督には『何があっても投手力が第一。野球はピッチャーだ』との信念があり、バッテリーを中心にした守りの野球を貫きました。そのポリシーを高津監督が受け継ぎ、投手力を整備したことが昨年から順位を大きく上げた要因でしょう。長いイニングを任せられる先発投手がおらず、小刻みな継投をせざるを得ないチーム事情の中で、清水昇(25)、今野龍太(26)の中継ぎ陣を大きく成長させました」
内藤氏も「後ろ(7・8・9回)を固めたことが大きい」と語る。
「野村監督は試合終盤の投手采配を重要視しました。高津監督も同様に、当初は抑えの切り札としていた石山泰稚(33)の調子を見極め、マクガフ(31)をストッパーに回した。非常に勇気がいる采配ですが、見事に成功させました。
高津監督は投手出身だけにピッチャーの心理をよく分かっていて、今季は今野や清水をうまく起用しました。選手の心を巧みに再生させる手腕も、野村野球を想起させます。あと私が聞いた話では、高津監督は仰々しい素振りは見せませんが、実はベンチ内では選手たちに戦術やサインなどについてかなり緻密に指示を出しているのだそうです」
(後編〈ヤクルト高津監督 野村克也氏の教えに自分流のアレンジを加えて大成功〉へつづく)
※週刊ポスト2021年11月5日号