その甲斐あってか、直近の統計で全国のジェネリック処方割合は平均8割以上に達するが、気になるデータもある。病院ごとにジェネリックの処方割合をまとめた数字だ。
厚労省中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織の分科会で出された参考資料「後発医薬品の使用状況」(2019年)を見ると、全国5000以上の病院のうち、多くは国の要請に従い9割前後のジェネリック処方となっているが、処方割合が5割前後と極端に少ない病院が一部にある。
注目すべきは、より大規模に高度な医療を提供する有名大学病院のなかにも、ジェネリック処方が多い病院と少ない病院があることだ。なぜ、このような差が生じたのか。
患者の安心安全を考慮
「ジェネリックを処方しない病院」として目立つのが、2019年度の処方割合が46.06%の慶應義塾大学病院だ。多くの著名人が通院・手術を受けたことで知られる日本屈指の有名病院だが、国策であるジェネリック処方は明らかに進んでいない。
慶應病院にその理由を聞くと、こう回答した。
「当院では、以前から患者さんが先発品を望んでいる背景が多少なりともあり、希少疾患など後発薬のない製品の取り扱いも多いという事情があります。また、最近では、ジェネリックメーカーのGMPや医薬品の製造管理及び品質管理の逸脱による供給停止の事例があり、安定的な供給を考慮するとジェネリックに変更しづらい状況もあります」(総務課)
回答中の「後発薬のない製品の取り扱いが多い」との記述からは、さまざまな診療科で先進医療を実践している同病院ならではの事情が垣間見える。
それに加えて、ジェネリックの安定供給への不安にも言及している。日医工や小林化工の不祥事発覚に端を発する問題は現在も尾を引いているのだ。
昨年以降、製品の自主回収や一時生産停止などで供給が滞り、一部が品薄状態となっている。東京都薬剤師会の6月の調査では、都内1441薬局の65%が「納品が滞り調剤業務に影響が出る場合がある」と回答していた。