木下「ドラマの制作の現場は、まさにコロナ第4波のまっただ中でした。しかも、小説の舞台である兵庫・尼崎を中心にすべて関西で撮影された。共演者と食事もできないなど制限は厳しかったですが、本当に演者もスタッフも一丸となって最後までやれたことは素晴らしいことでした。主演の北村有起哉さんは東京出身なのに、まるで地元関西出身みたいに関西弁が完璧で、驚きましたね」

沖田「さすがに北村さんも関西弁が出てこなくて“ウッ”と詰まるところもあった。それが、14年間の長期服役から復帰して、そんなにスラスラと言葉が出ず、テンポが遅れがちな主人公と見事にリンクしたところもありました」

木下「撮影現場には、沖田先生がいつも同行してくださったので、正しい原作の世界観がキチッと作り上げられたところがあります。ぼくも昔から、現場で納得いかないことがあったら、監督にも“違うんやないか”と話し合いをもちかけるタイプだから、お互いのこだわりや食い違いを、原作者と話し合えるのはいいことだった。こうしていいドラマが仕上がったのは、そうした沖田先生の存在、そして原作があったからです」

沖田「映像が、言葉や文字を超えてくれたのは本当にうれしかった。北村さんやほうかさん、皆さんの力で自分が生み出した『ムショぼけ』が自分の手から離れて、飛び立ってくれました。育てた子がみんなのものになった、そういう気持ちがあります」

 笑って泣けて、清々しい気持ちになれる作品だ。

※女性セブン2021年11月11日・18日号

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