菅野智之選手(時事通信フォト)

菅野智之選手(時事通信フォト)

 チーム内に物言えぬ空気を生み出した原監督だが、シーズン終了前に来季の続投を巨人・山口寿一オーナーが発表した。元木、阿部両コーチも留任で、来季以降も原監督の「全権体制」は変わらないと見られる。広岡氏は球団の決断に警鐘を鳴らす。

「山口オーナーは経営のプロでも野球は素人。野球はGMが戦力を整えて監督が結果を出せなければ監督がクビ、戦力を整えられずに負けたらGMの責任。今年はFAや新外国人も外れて結果もダメだったんだから(原監督は)クビじゃないの?

 いまの原巨人の最大の問題は責任が誰にあるかが分からないこと。コーチは監督の顔色ばかり窺って、負けたら監督の責任という雰囲気で、対する原監督はコーチや選手の責任といわんばかりに二軍や三軍に飛ばしてしまう。そんな原監督を野球を知らないオーナーが擁護している。巨人はそんなチームじゃなかった」

 第2次長嶋政権で一軍打撃コーチ、2012年から2015年までDeNAの監督を務めた中畑清氏は「全権監督」という立場の難しさをこう語る。

「全権監督が責任をとるということは辞めるということだろうね。そして、それを決められるのは辰ちゃん自身だけ。だからその判断はすごく重い。オレにはできない」

 11月6日から始まるクライマックスシリーズを勝ち抜けば、逆転日本一の可能性は残っている。狂った歯車を元に戻す最後の機会だ。

「3位というのは一番開き直れる順位なので、捨て身でいける。短期決戦で若い選手をうまく使って下克上ができれば、来季につながる可能性はあるよね」(中畑氏)

 常勝球団復活のために原監督に与えられた絶大な権限が巨人を自縄自縛に追い込んでいる。

※週刊ポスト2021年11月12日号

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