フィギュアスケートはほとんど「跳ぶ」競技
世界に目を転じれば、いま、女子フィギュアを席巻しているのはロシア勢である。4回転を、しかも数種類の4回転を跳ぶ選手が複数いる。フィギュアスケートに詳しいライターの土田亜希子氏はこう話す。
「坂本選手がNHK杯で出した223.34点は、今シーズンのグランプリシリーズの中で上から6番目の得点です。坂本選手を上回る点数を出しているのはすべてロシア選手で、皆、4回転やトリプルアクセルを跳んでいます。とはいえ彼女たちも失敗することはあるので、失敗すれば坂本選手にもチャンスはあるでしょう。しかし、今のジャンプ構成では、五輪出場には近いけれど、五輪で自力でメダルを取るのは難しいと思います」
ゆえに大技を持つ紀平の復活が待たれるのだ。とはいえ坂本選手も「ショートもフリーもまだ伸びしろがある」と語っている。
「ルッツジャンプがカギになるでしょうね。坂本選手はルッツが苦手で、NHK杯でもエッジ違反を取られました。ルッツは3回転ジャンプのなかでは最も基礎点が高いジャンプで、平昌五輪で金メダル(ザギトワ)と銀メダル(メドベージェワ)を分けたのもルッツジャンプでした。なんとかルッツを克服してもらいたいですね。
ただ、ロシア選手にはないスピード、ジャンプの大きさは坂本選手の魅力です。スポーツとしてのフィギュアスケートはほとんど「跳ぶ」競技になっていますが、基本にあるのは「滑る」行為で、坂本選手の演技はそれを思い出させてくれます。こういうフィギュアスケートもあるんだよ、ということを、五輪の場で世界に知らしめてほしいです」(土田氏)
4年前の平昌五輪では、4回転を跳ぶ選手も、トリプルアクセルを跳ぶ選手も、女子のメダリストにはいなかった。4年間で女子フィギュアスケートはかくも進化した。熾烈な五輪代表争いは選手たちを一層成長させ、ファンを熱狂させるだろう。
※フィギュアスケートの五輪代表選考基準
1人目/全日本選手権(12月下旬)の優勝者
2人目/全日本選手権の2、3位の選手と、グランプリファイナル(12月上旬)の上位2選手、国際スケート連盟(ISU)公認のシーズン最高得点の上位3選手を対象に選考
3人目/全日本選手権終了時点での世界ランキング、五輪シーズンの世界ランキングなどを考慮して総合的に判断