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小田急ロマンスカーで一番映える車両「VSE」が引退を余儀なくされた理由

引退が間近に迫る小田急ロマンスカーVSE

引退が間近に迫る小田急ロマンスカーVSE

 日本における鉄道展望車の歴史は明治後期に遡るとされている。今でも人気が高い座席から前方に景色が広がる前面展望車は、昭和初期から登場した。今では前面展望といえば小田急電鉄のロマンスカーというほどイメージが強く、特に2005年から走るドーム型の天井が特徴のVSEはロマンスカーを代表する位置づけにあった。ライターの小川裕夫氏が、名車VSEの今後について聞いた。

 * * *
 2021年12月17日、小田急電鉄が来春のダイヤ改正を発表した。小田急の発表を受け、鉄道ファンに大きな衝撃が走っている。

 2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道各社は減便を続けてきた。他社と同様に、小田急も来春のダイヤ改正で減便を実施する。それだけだったら、予想できなかった話ではない。

 鉄道ファンに衝撃を与えたのは、ダイヤ改正によって小田急ロマンスカーの50000形VSE(=Vault Super Express)が定期運行を終了するという内容だった。小田急ロマンスカーと一口に言っても、何種類かある。VSEは、そのなかでも格別な車両と認識されてきた。

 VSEは建築家・岡部憲明さんがデザイン。ドーム型の屋根が特徴的でスタイリッシュなデザイン、シルキーホワイトの塗色をベースとした上品なカラーリング、床下の機器をカバーで覆うことにより無機質な印象を与えない配慮など、現代風に例えば、“映える”車両だった。

 外観だけではなく、内装においても素晴らしい点が多々ある。気品が溢れる落ち着いた空間は、車内は間接照明を用いることで実現。長時間の乗車でもストレスが少ないように、シートピッチは(座席における前後の間隔)1050ミリメートルもとり、足元はゆったりして寛げるようになっている。モケット(座席の素地)も、見た目のデザインだけではなく座り心地にも配慮されている。

 外観・内装ともに非の打ちどころがないVSEは、小田急が総力を結集したロマンスカーといえる車両だった。それだけに鉄道雑誌が小田急特集を、旅行雑誌が箱根特集を組む際はVSEが表紙を飾るのが当り前になっていた。

「VSEは2編成を運行していますが、どちらも2022年3月12日のダイヤ改正で定期運用を終了します。以降もイベント列車や臨時列車として運行しますが、2023年秋をメドに完全に運行を終了する予定です」(小田急電鉄広報CSR担当)

多くの名車を生んできた小田急ロマンスカー

 小田急ロマンスカーは、これまでにも多くの名車を生んできた。1957年に登場した初代3000形SE(=Super Express)は、超高速鉄道のパイオニア的な車両として知られる。その技術は新幹線にも採用されたほどだ。

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