私も内心、もしかしたら、「談志を継ぎたいならお前が継いでいいよ」と言われるのかなと思っていたら、「別に継ぎたいやつが継げばいいんだけど、(立川)志の輔じゃないと世間が許さないだろう。お前がどうしても継ぎたきゃ継いでもいい」という言い方をしたんです。なんでわざわざ私を舞台に呼び出したのか、恥をかかせるためなのか。当時ネットにも書かれましたよ、「志らく涙目になる」と。
その時は分からなかったけど、当時から志の輔兄さんは全国区の知名度があり、志らくはそうではなかった。談志がよく言っていたのは「大きい名前を襲名するのは影響力のないやつばっかりだ」と。このまま私が継いでも、そうなっちゃうよということでしょう。志の輔兄さんと同じくらい売れていれば、もし継いだ時に周囲も「ああ、そうか」と言ってくれるだろうと。これも死んだ後に気付いたことです。
もっとも、今は談志を継ぐ気はなくなりました。かつては談志という名前を継げば全国区になるというスケベ心がありました。師匠からこれだけ可愛がってもらってるんだから自分が継ぐべきだという思いもあった。
けれど、談志は件のトークショーで「弟子に名前を継がせた場合、談志さんは名前はどうするんですか?」と聞かれて、「名前なんてもうどうでもいいんだ、クリスマスでいい。立川クリスマスでいい」と言ったんです(笑)。志らくだろうがなんだろうが、売れちゃえば名前なんてどうでもいい。それより自分が落語家としてどうなるかが今は大事です。
(第2回につづく)
【プロフィール】
立川志らく(たてかわ・しらく)/1963年、東京生まれ。1985年に立川談志に入門。1995年、真打昇進。『全身落語家読本』『雨ン中の、らくだ』など著書多数。『ひるおび!』ほかテレビ出演多数。12月25日に、高田文夫氏が企画する「第四回オール日芸寄席~おっと天下の日大事~」(有楽町・よみうりホール・前売6000円=全席指定・主催ワタナベエンターテインメント https://www.watanabepro.co.jp/liveinfo/12591)に出演予定。
※週刊ポスト2022年1月1・7日号