弁護士を目指す
一般入試まで3か月。斎藤氏は志望校を慶應一本に絞って過去問と格闘した。間違えたら立ち止まり、なぜミスしたかを徹底的に追求した。
2020年2月、迎えた受験本番では試験会場の日吉キャンパスに近いホテルに泊まり込み、4学部を受験した。
そして合格発表──。3学部の不合格が伝えられてあきらめかけたが、最後の学部で「合格」の二文字が目に入った。
「夢ではないかともう一度見たら、本当に合格でした。震える手でお世話になった方々に連絡してお礼を言いました。涙が止まりませんでした」
斎藤氏を見守ってきた藤岡塾長が振り返る。
「合格の連絡があった時は『おめでとう。よくやった』と伝えました。いわゆる普通の人からすれば回り道をしたかもしれないけど、誰もが自分に限界を作ることなく、いつでも人生を再スタートできることを斎藤さんが示してくれました」
2020年4月、斎藤氏は44歳にして慶應大学に入学し、現在は不動産業などのビジネスを続けながら学業に勤しむ。2回り年が離れた学生からは学ぶことが多く、毎日が楽しいと笑う。
「将来的には司法試験を受けて弁護士を目指したい気持ちもありますが、まずはしっかり勉強して慶應大学を卒業することが大事です。僕の姿を見て、いくら苦手なものでも好きになれることを知ってもらえると嬉しいですね。一度きりの人生、自分を信じて生きてほしい」
4月の新学期から、斎藤氏の慶應三田キャンパスでの大学生活が始まる。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2022年2月4日号