国際ロマンス詐欺は世界で増加中。シドニー出身の女性はオンラインで自称米軍中尉と知り合い婚約、上海からオーストラリアへ持って帰るよう依頼されたバッグにあった違法薬物のため経由地のマレーシアで逮捕され裁判を受け5年がかりで2019年に無罪になった(AFP=時事)
「会社員の息子が、年末に彼女を家に連れてきてくれたんです。すごくいい子で、妻と二人で大歓迎したのですが、出会いのきっかけを聞いたら『マッチングアプリ』と言っていて驚きました」とその公務員男性は驚きを隠さない。
「妻と二人で顔を見合わせたら、息子に、『普通だよ。この間行った結婚式の二人もマッチングアプリで知り合ったって』と言われてしまって。リモートワークが続く中、確かにアプリでも利用しないと出会いもないですよね」
彼の息子は20代半ばの会社員だが、筆者の大学の受講生も、マッチングアプリの利用率が高く、講義内で質問した際にも2割以上が「利用している」と回答。「マッチングアプリで異性と会った」と答えている学生も多く、マッチングアプリでの被害実態を講義で伝えたところ、「数回のやり取りですぐに会った。二人きりで夜に会っていたから、先生の話を聞いて、あの会い方は危なかったのかも、気をつけなければと思った」などの感想も数名からもらった。
中には、マッチングアプリで会った相手に「投資に興味がある? いい話があるけど」と言われたという学生もいた。話がうまくて楽しかったが、お金がないので手は出さなかったそうだ。もし話に乗っていたら、投資詐欺の被害につながった可能性もある。
コロナ禍の寂しさにつけこむ詐欺師たち
マッチングアプリをきっかけに知り合った人から、パートナーとしての関係をちらつかされて詐欺被害に遭う人も多い。最近では、2021年12月から2022年1月にかけて、佐賀県の30代女性がマッチングアプリで知り合った自称シンガポール国籍の男に現金210万円を騙し取られたことが分かった。男は「あなたと結婚したら資産を管理してもらいたい」「投資の知識を勉強してほしい」などという投資話を持ちかけ、指定の口座に振り込ませていた。
国民生活センターによると、出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとしたこのような投資詐欺が急増しているという。年度別相談件数を見ると、2019年から2020年で2倍以上に増加していることがわかる。また、実際にお金を振り込んでしまった人たちの年齢層は30~40代が中心で、分別があるはずの大人が狙われていることもうかがえる。
SNSなどで知り合った外国人から結婚願望や恋愛感情などを利用してお金を騙し取られる、通称「国際ロマンス詐欺」も目立つ。