デビューから時は過ぎ、世の女性がときめく対象は、少しずつ彼の風貌からは離れていったように思う。その理由は追い風のように活躍する、平成生まれたちが生んだ新しい爽やかさ。ただそんな時流に迎合することなく、スペシャルドラマ『弟』(テレビ朝日系・2004年)、『裕さんの女房』(NHK BSプレミアム・2021年)で若き日の石原裕次郎役を2度も演じている徳重さんがいた。

 彼がデビューした2000年頃と言えば、若手俳優は月9や朝ドラデビューを第一目標として、時折、男性ファッション誌の表紙を飾るのがすでに通例だった。そんな習わしなどどこ吹く風とばかりに、NHK大河ドラマやTBS『渡る世間は鬼ばかり』(2006年〜)、同『水戸黄門』(第39部、2008〜2009年)など、石原軍団の末っ子という顔を1ミリも裏切らず、昭和の香りを漂わせていた。

 個人的に好きだったのは、石原軍団の恒例行事とも言える炊き出しに参加していた徳重さんの姿。会見では先輩たちを立て、自分は後ろへ下がって盛り上げる。真偽はいざ知らず、週刊誌で彼が炊き出しのカレー班だったという記事を見て、何だか心がほっこりした。そしてこの人は一生後輩でいられるのだと思うと、羨ましくも感じたものだ。

 そう思っていたところに世間も知ることとなる事件が起きる。

新しい場所で、新しい魅力を叩き出した

 昨年、石原プロモーションが俳優のマネジメント業務を終了して、彼は波瑠さんも所属するホリ・エージェンシーへ移籍する。私は会ったこともないけれど、徳重さんが心配になってしまった。

 舘ひろしさん、神田正輝さんといった大御所はどこの世界に行っても必ず映える。いまだに「泣かないで」のワンフレーズだけでご婦人たちを震わせることができる芸能人といえば舘さんくらいだろう。存在だけで魅せる実力は、後輩がどんなに喰らいついても追いつくことはないはず。でも徳重さんはそれまで実力派の先輩だけに囲まれて、ずっと下っ端でいて良かった存在。それが他の事務所に行けば、43歳は突然の先輩株となる。これは社会人の転職でもよくある“やりづらい”では。

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