本田美奈子.さんがキム役を演じたミュージカル『ミス・サイゴン』の訳詞も岩谷が手がけている

本田美奈子.さんがキム役を演じたミュージカル『ミス・サイゴン』の訳詞も岩谷が手がけている(撮影/女性セブン写真部)

 作詞家・岩谷の才能を高く評価し、いち早く作詞を依頼したのは大手芸能プロダクション『渡辺プロダクション』社長の渡辺晋さんと妻の美佐さんだった。

 岩谷と美佐さんは、東宝時代の同僚だった。美佐さんは、当時力を入れていた所属タレントのザ・ピーナッツの曲の作詞を岩谷に依頼。作曲は、宮川泰さん(享年75)が手がけ、やがて2人は数々のヒット曲を生み出す名コンビとなる。

 当時の日本は、海外の曲を和訳して歌うカバーポップス全盛期だった。だが、これからはオリジナルのポップスを歌う時代が来る。そう信じて、宮川さんとともに試行錯誤を繰り返していた岩谷。そんな葛藤の末に生まれたのが、ザ・ピーナッツの代表曲となる『ふりむかないで』だった。

 そして、ザ・ピーナッツが国民的人気を得ると同時に、岩谷の知名度も上がり作詞家として売れっ子になっていく。

(第3回につづく)

【プロフィール】
岩谷時子/1916年3月28日、京城(現韓国・ソウル)生まれ。本名・岩谷トキ子。神戸女学院大学部英文科卒。1939年に宝塚歌劇団出版部に入り、越路吹雪と出会い、のちにマネジャーとなる。戦後、東宝文芸部を経てフリーに。作詞家として活動を始める。越路吹雪が歌う『愛の讃歌』『ラストダンスは私に』などの訳詞、ザ・ピーナッツの『ふりむかないで』、加山雄三の『君といつまでも』、郷ひろみの『男の子女の子』など、手がけた作品は数千に上る。2013年10月25日、97才で没。

音楽ディレクター・草野浩二さん(84才)/東京芝浦電気レコード入社とともに、事業部・制作ディレクターとなり、岩谷と『夜明けの唄』などのヒットを世に送り出す。「岩谷時子音楽文化振興財団」の理事に就任し、「岩谷時子メモリアルコンサート?〜Forever〜」の企画に携わる。

音楽評論家・田家秀樹さん(75才)/若者雑誌編集長を経て、音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソナリティーとして活躍。2006年4月から毎日新聞にて連載『岩谷時子・愛の名曲物語』を開始し、岩谷を取材。著書に『歌に恋して—評伝・岩谷時子物語』(ランダムハウス講談社)がある。

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2022年3月3日号

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