国際情報

錦糸町で働くウクライナ人女性の悲嘆「ロシアとはずっと戦争」

1990年代に錦糸町では外国人パブが急増した(イメージ)

1990年代に錦糸町では外国人パブが急増した(イメージ)

 東京の錦糸町に外国人バーが増え、なかでもロシアンパブという看板を掲げた店が1990年代に激増した。ロシア美女の接客触れ込みだったが、実際に働いているのはルーマニアやウクライナなど、ソ連崩壊によって独立した国からやってきた人が多かった。1991年のソビエト連邦崩壊から30年が経ったいまも、かつてほど目立たないがウクライナから出稼ぎにきている人たちがいる。俳人で著作家の日野百草氏が、故郷の家族のために日本で働くウクライナ人女性に、ロシアのウクライナ侵攻について率直な気持ちを聞いた。

 * * *
「ロシアを信用するウクライナ人はいません」

 東京錦糸町で夜の仕事を副業でしているウクライナ女性に話を聞く。このときは2月21日、ロシアはウクライナに侵攻せず、国境に配備した軍を一部撤退させると発表していた。プーチン大統領も戦争を否定した。それでも彼女は信用していなかった。

「ロシアはそういう国です。ウクライナはいじめられて、奴隷にされたこともあります」

 彼女はウクライナの日本語学校にも通った経験もある国立大学卒のエリートだと語る。大学でも日本語に触れたとのこと。それでも直接書き起こすには適していない程度の語学力のため、本稿は筆者が補った上で英語も交えてもらったものを適時改めている。

「何度も奪われました、また奪おうとしてる」

 シングルマザーとなり、紆余曲折を経てコロナ禍より以前に来日した。彼女の所属する店も「ロシア美女」など広告の煽りに使っているがロシア人は少ないという。もちろんウクライナ人はロシア人ではないので嫌だが、仕事だから仕方がないとも。

「ウクライナ人と言ってもロシア人と一緒にする人は多いです。仕方ないです」

 詳しくは書かないが彼女の店はデリバリー形式、不特定多数にバレる心配もないが、同じ仕事をする他の女性と会うこともまた少ないという。それでもウクライナ系のコミュニティは小さいながらも各所に存在し、情報を交換しているそうだ。もちろん副業は隠している。

ロシアはとても恐ろしい国。信用できません

 実家の場所を聞くと西側でポーランドに近いほうだと話す。「リヴィウとか」と尋ねると「よく知ってますね!」と喜んでくれた。リヴィウではないが、その近くという。

「東よりは安全ですが、ロシアはとても恐ろしい国です。(西側も)全部奪うつもりです」

 彼女の言う「東」とはドニエプル川の沿岸やその先のことだという。首都キエフ、ハルキウ、ドネツクといった都市がある。黒海のオデッサ、セバストポリ(彼女の立場ではウクライナ領)なども彼女の故郷からすれば(地図的には南東だが)東ということか。どれもロシアが狙い続け、いまも狙う重要拠点だ。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン