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錦糸町で働くウクライナ人女性の悲嘆「ロシアとはずっと戦争」

ロシアが侵攻してきた2月25日、ウクライナ西部の街リヴィウでは献血センターに多くの人がかけつけた(AFP=時事)

ロシアが侵攻してきた2月25日、ウクライナ西部の街リヴィウでは献血センターに多くの人がかけつけた(AFP=時事)

ウクライナ人は故郷が大好き。ひどい目にあっても戦うから、たくさん死んでしまう

「両親、祖母、子どもがいます。できれば帰りたいです。家族が心配です。帰ればよかったと後悔してます、いま無理です」

 彼女の来日の理由は就職とお金だが、在留できている理由はあえて問わなかった。芸能や日本の企業就職、外国人講師など「在留資格認定証明書」は様々な形で交付される。「招へい人」と呼ばれる身元保証人のような形もある。残した家族のために異国で生きるとは並大抵のことではない。連絡はとれているのか。

「はい。連絡はできますし顔も見てます。ずっと戦争していたのに、帰ればよかった」

 彼女によればウクライナ側からすればロシアとはずっと戦争、という認識だという。日本の報道が少ないだけでクリミア併合からずっと戦争状態だという。

「ウクライナ人は故郷が大好きです。だからロシアとも戦います。ひどい目にあっても戦います」

 何度も彼女が訴える「何もしてないのに」は本当にそうで、侵略者は理由をつけては他者を理不尽に攻撃する。

「だからたくさん死んでしまう。私の家族も。私たちは何もしてないのに」

 私たちは何もしてない、ウクライナが何をしたというのか、というのはシンプルな疑問で、それを命題とするならロシアの戦争行為は蛮行と呼ぶしか無い。本稿、一方的にロシアを責め立てているように感じるかもしれないが当たり前の話で、今回の侵略にロシアの正当性はない。「自国民を守るため」の平和軍などと言っているが大半は送り込んだプーチン支持者を中心とする連中で、そもそも先のクリミア併合を含めた工作によりでっち上げた「侵略のための口実」である。筆者はロシアの文化も文学も大好きだが、それとこれとは別である。今回に限ればロシアが戦争をしなければ済む話、この一点しかない。

 そして2月24日、ロシア軍はウクライナに侵攻した。「ロシアはそういう国」という彼女の言う通りだった。ウクライナ人は戦うといった言葉も本当で、一般市民も祖国防衛のために銃をとり抗戦するという。そして日本人は、この現代にも他国を直接的な軍事力で侵略する大国がある、という現実を目の当たりにすることとなった。理不尽な侵略で大勢の人が死ぬことをなんとも思わない国がある、という恐怖とともに。信じられないほどに酷い話だが、いまこの時も一方的な攻撃でウクライナ人が次々と犠牲になっている。

 ウクライナ、なんと悲しいことか。そうした大国の脅威は日本にもある。それは理不尽な理由で原爆まで落とされたいつかの日本であり、これからの日本にも起こりうる現実だ。日本だって北方領土はクリミア同様に奪われたままである。ここで毅然と日本もロシアに対して声を上げなければ、同じように人権を気にしないとされる別の大国もまた日本を狙ってもいいとなる。あの大国もまた本気で日本を狙っている(妄想と笑われても構わない)。ウクライナ人の悲しみは私たちにとっても「遠くユーラシアの他人事」ではない。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)ジャーナリスト、著述家、俳人。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、生命倫理のルポルタージュを手掛ける。

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