遠藤:典子ちゃんは野球選手でした。
角川:やはり女優を妻にするというのは難しいんでしょうね。特に相手がアーティストやミュージシャンは、互いの自己顕示欲のぶつかり合いになりますから。
遠藤:確かに。
角川:それにしても、3人ともいまだに透明感がありますね。特に知世。彼女は角田光代さん原作のドラマ『紙の月』に主演しています(2014年・NHK)。これを見たとき、なんてピュアなんだ、知世はデビューの頃から変わってないと感動しました。
彼女の場合は『時をかける少女』がデビュー作にして代表作。長年その呪縛があって、『時をかける少女』を歌うことができなかったそうです。結婚を経て、ボイストレーニングを受けて、ようやくデビュー35周年のときにアレンジを変えて歌うことができた。このライブのとき、彼女にビデオレターを出したのですが、どうやら会場に来てほしかったらしいです。
遠藤:角川三人娘はその後の映画界に大きな影響を与えました。ぼくは、『GO』(2001年)という映画で、脚本を手がけた宮藤官九郎くん(51才)と仕事をしていますが、彼は角川映画に影響を受けていて、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)の大女優・鈴鹿ひろ美は、薬師丸さんを当て書きしている。映画監督の行定勲さん(53才)も、薬師丸さんの作品を何度も見ていると話していました。
角川三人娘の映画は、40年近くを経たいま振り返っても、21世紀の日本映画のいしずえを築いたと思います。
(了)
【プロフィール】
編集者・映画監督・映画プロデューサー 角川春樹さん(80才)/角川春樹事務所代表取締役社長。出版界の風雲児として、数々のヒット作を生み出すかたわら、映画プロデューサーとして、1976年『犬神家の一族』を皮切りに、映画界に進出。角川映画として、『人間の証明』(1977年)、『野性の証明』(1978年)、『ぼくらの七日間戦争』(1988年)、『天と地と』(1990年)など70作を世に送りだす。2020年には監督作の映画『みをつくし料理帖』が公開。全人生を語った書籍『最後の角川春樹』(伊藤彰彦著/毎日新聞出版)でも『角川映画』誕生秘話を明かしている。
映画宣伝プロデューサー 遠藤茂行さん(68才)/東映にて角川映画『戦国自衛隊』(1979年)を皮切りに、『セーラー服と機関銃』(1981年)、『探偵物語』(1983年)、『Wの悲劇』(1984年)など数々の話題作の宣伝を手掛ける。東映作品として『ビー・バップ・ハイスクール』(1985年)、『バトル・ロワイアル』(2000年)、『GO』(2001年)ほか数々の作品に宣伝、企画、製作などとしてかかわる。現在も映画プロデューサーとして活動する傍ら、ダンス・芸能専門学校『東京ステップス・アーツ』で講師を務める。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2022年3月17日号