国内

医療カルテでわかった飯塚幸三受刑者のパーキンソン症候群の症状

遺族の松永拓也さん(左)、パーキンソン症候群について説明する代理人弁護士の高橋正人さん、一般社団法人関東交通犯罪遺族の会の代表理事・小沢樹里さん(右)。

遺族の松永拓也さん(左)、パーキンソン症候群について説明する代理人弁護士の高橋正人さん、一般社団法人関東交通犯罪遺族の会の代表理事・小沢樹里さん(右)。

 池袋暴走死傷事故で禁錮5年が確定し収監された飯塚幸三受刑者(90)と損保会社を相手どり、民事裁判を継続中の遺族・松永拓也さんらが会見を行い、新たな事実が明かされた(3月15日)。

 2019年4月、東京・池袋で旧通産省工業技術院元院長の飯塚受刑者が運転する乗用車が暴走し、松永さんの妻・真菜さん(当時31才)と長女・莉子ちゃん(当時3才)が亡くなり、9人が負傷した事故。

 飯塚受刑者は自動車運転死傷行為処罰法違反で2021年9月、実刑判決を言い渡されたが、裁判中の被告人質問では「車の運転に全く問題がなく、正常に運転できていた」と供述。パーキンソン症候群と事故の因果関係は、刑事裁判では争点になっていなかった。

 しかし、今回の民事裁判では、原告側の求めで、飯塚受刑者の医療カルテが提出され、事故前から認められていた症状が詳細になった。

 飯塚受刑者は、2019年3月にはパーキンソン病の疑いが指摘され、自動車の運転については必要最小限にし、体調が悪いときは控えるようにと医師から注意されていたのだ。

 遺族側の代理人弁護士の高橋正人さんによると、今回、飯塚受刑者側は、医療カルテにもとづき、以下の症状・診断があったことを認めた。

1)2016年ころから下肢筋力が低下していた。

2)2017年10月、転倒。同年11月、歩行時のふらつきにより、エレベーターのドアの前で転倒。

3)2018年、数回階段を踏み外し、3回転倒。転倒を繰り返したため神経内科を受診した。

4)遅くとも2018年12月には、パーキンソン病の疑いないしパーキンソン症候群の可能性もあるとの診断を受け、具体的な症状として、静止時振戦(じっとしているときに手足が震え、動き出すと止まる症状)はないが、やや表情は乏しく、両膝固縮(筋肉が固くなる)の疑いがあった。

5)2019年1月にも、パーキンソン病の疑いが指摘され、静止時振戦はないが、やや表情は乏しく、右膝に鉛管様固縮(鉛の管のように筋肉が固くなる)ありとの診断を受けていた。さらに、歩行障害が進行しているとの指摘もある。

6)2019年2月にも、パーキンソン病の疑いが指摘され、静止時振戦はなく、また、方向転換は可能であるが、他方で、やや表情が乏しく、右膝に鉛管様固縮ありとの診断を受けていた。

7)2019年3月にも、前月と同様の診断を受けていた。さらに、自動車の運転については必要最小限にし、体調が悪いときは控えるようにと医師から注意されていた。下旬ころには、小刻み歩行やすくみがあり、右下肢優位の鉛管様固縮ありとの診断を受けており、単独歩行は可能だが歩行障害があった。

8)2019年4月に入ると、(パーキンソン症候群のうち)大脳皮質基底核変質症の疑いとの診断を受け、単独歩行は可能であるが、右下肢優位の筋強剛、歩行障害が認められていた。また、パーキンソン病の治療薬であるレボドパを投与しても歩行の改善がないとの診断を受けていた。

「このように運転を差し控えなければならないような症状が出ていたにもかかわらず、飯塚氏は運転を続けていました。

 特に、オートマチック車のように右脚だけでアクセルペダルとブレーキペダルを踏み換える車両の場合、右脚がこわばる筋強剛は致命的に危険です。

 さらに、大脳皮質基底核変質症の症状は、認知機能障害が最も頻度が高い。このような疾患に罹患していることを知りながら、運転を続け、重大な事故を引き起こした自動車運転上の注意義務違反の程度及び性質は、重大かつ悪質というべきです」(高橋さん)

 民事裁判で病気について争点とすることについて、遺族の松永さんはこう語る。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト