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新手のマルチまがい商法は芸能人や経営者をこうして籠絡する

新しいネットメディアに掲載される対談の仕事だと思っていた(イメージ)

新しいネットメディアに掲載される対談の仕事だと思っていた(イメージ)

 取引を行う相手企業について、財政状況や反社会的勢力との関係性などを調査する「信用調査」の重要性が今後、増してゆくかもしれない。そんな事例が、いま、広がりつつある。ライターの宮添優氏が、芸能人や経営者が意義ある仕事を、ネット検索しても悪評が見当たらず引き受けたところ、実際には被害を訴える人がいるビジネスの宣伝に利用されていた顛末をレポートする。

 * * *
「最初は何かの間違いか、単なる嫌がらせかと思いました。しかし、その後も嫌がらせのような書き込みが続きました。何が起きているのかと不安でした」

 沈痛な面持ちで取材に答えてくれたのは、都内にある中堅芸能事務所幹部・早田誠さん(仮名・30代)。所属タレントAのSNSに、なぜか最近になって突然「アホ」「バカ」といった書き込みが相次いで寄せられるようになったというのだ。いや、それだけならまだよかった。今度は、SNSのダイレクトメールに「詐欺師」「犯罪の片棒を担いでいる」といった、タレントにも早田さんにも全く心当たりがない非難まで届くようになった。早田さんの頭にはすぐ「芸能人による闇営業騒動」がよぎった。

「Aが、我々に黙って怪しい仕事を引き受けたのではないか? と真っ先に思い、マネージャーを呼び出しました。でも、マネージャーも本人もやはり心当たりがないと。それで色々と調べたら、都内にあるX社という企業からのオファーで、Aがインタビューされた記事が、X社のサイトに掲載されていたのですが、どうもそれが原因ではないかということがわかりました」(早田さん)

 X社が運営するサイトには、確かにAの顔写真と記事が掲載されていた。そこにはAが「X社の皆さんはみな元気で素晴らしい」と賞賛しているようなニュアンスの一文も載せられていた。なぜ、この仕事をしたのかとマネージャーに問いただしても「オファーがありギャラも発生するということだったから受けただけ」と消え入りそうな声で釈明するばかり。

「簡単なインタビューでいくらかギャラがもらえるということで、何も調べずに仕事をうけていたようでした。X社のサイトにはAの他にも、有名なスポーツ選手、芸能人、文化人のインタビューがずらり並んでいて、確かに、パッと見ただけでは何の問題もないように見えたのも事実。そのときは、まだよく訳がわかっていませんでした」(早田さん)

 後日、マネージャーが飛んできて早田さんに見せたのは、SNS上のとある書き込みだった。書き込みによると、X社は表向き、著名人を招いたセミナーを開催したり、著名人とX社社長の対談記事などを掲載する情報サイトを運営している、とのことだったが、会社の業務実態は違法な「マルチ商法」企業だと書かれていたのだ。その前提でネット検索をすると、被害を訴える人が一定数おり告発するサイトやSNSアカウントも複数存在していた。そして、会社の関係者が業務に関することで逮捕や起訴されたり、という事態には至っていないため会社名などは伏せられているが、すでに一部メディアでも取り上げられていたのである。

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