2018年1月、キエフにあるホロドモール(人工的大飢饉)犠牲者の慰霊碑にろうそくと小麦を捧げる(AFP=時事)
小麦と聞くと小麦粉そのものはもちろんパン、うどん、パスタを想像するだろうが、加工食品としては餃子(皮)やカレーのルー、菓子などあらゆる食品に小麦が使われている。冷凍食品も、コンビニ弁当も、カップ麺も、私たちが現代社会で便利に食している多くの商品に小麦が使われている。自給率は10%に満たないというのに。
「もちろん日本はロシアやウクライナから小麦はほとんど輸入していません。ロシアもウクライナも小麦輸出大国ですがEUの一部やアラブ、北アフリカ向けですからね。でもシカゴ(穀物市場)の相場は個別で関係なくとも影響を受けます。もちろん日本もです」
米国のシカゴ商品取引所は取引量と金額が世界で最も規模が大きいため、そこでの小麦やトウモロコシなど農産物の価格は「シカゴ相場」と呼ばれ、世界の穀物価格の指標として扱われている。そのシカゴではこの3月、14年ぶりに最高値が更新された。もちろん戦争、世界の小麦輸出量全体の16%を占めるロシアと、10%のウクライナという小麦の世界的産地の影響だ。
日本にとってロシアやウクライナの小麦は関係ないが、世界全体の供給量の減少は回り回って日本の買い付け価格の高騰も招く。日本が買っていたアメリカ、カナダ、オーストラリア(この3カ国で日本の小麦輸入の9割以上を占める)の顧客に、これまで以上にEUや中東、アフリカが割って入ることとなる。
「3月に入って農水省は(小麦の引き渡し価格を)17%引き上げました。いまは引き上げ前の価格で市場に回ってますが、在庫が無くなる夏くらいには小売に反映されるでしょうね」
小麦は米とともに主食であり国民生活の生命線のため国家貿易下にある。そのため日本政府が一元輸入して企業に販売しているが、戦争が始まる前から小麦の高騰と円安による厳しい綱渡りが続いていた。そこにロシアのウクライナ侵略。戦争が長引けば小麦はもちろん他の穀物も高騰するだろう。戦争の拡大はシーレーン(海上交通路)にも影響を及ぼす。
「戦局次第では買い負けどころの話ではありません」