2022年3月、中国とロシアを結ぶ江蘇省のパイプライン建設現場(CFoto/時事通信フォト)

2022年3月、中国とロシアを結ぶ江蘇省のパイプライン建設現場(CFoto/時事通信フォト)

 あくまで商社マンとしての立場の話だが、ビジネスとすれば正解だろう。日本はコロナ禍でも世界的に厳しい自粛を国民に強いてきた。国民の生命が大切なことは当然だが、経済的には厳しくなり、「命より経済」の大国からはさらに遅れを取りつつある。政府も本音は経済優先なのだが、生真面目な国民性に苦慮しているように思う。ウクライナ支持はもちろん、許されざる侵略者ロシアを非難するのも当然だが、エネルギー資源もなく食料の大半も輸入に頼らざるを得ない国である日本は資源大国のようにはいかない。ロシアと通じて私腹を肥やす日本の利権屋には気をつけなければならないが、中国にみすみす横取りされるのもまた国益を損なう。

「中国が気に入らないのは私もそうですが、あれだけの大国がしたたかに振る舞っているのに日本が超大国のように威勢よく振る舞うのはどうかと思いますよ。商売で実感する身としては、どこもウクライナを本気で支援しようなんて思ってない、天秤にかけてます」

 筆者が思うに、アメリカもEUもお互いの出方を伺っているように見える。あわよくば中国のように、あそこまで露骨でなくとも経済的損失は避けたい思惑がある。ロシアへの経済協力予算21億円をちゃっかり2022年度予算案に盛り込んだ日本政府もまたそうだろう。

「ロシアに制裁しながら援助予算はキープでガス田開発ものらりくらり、ウクライナは本当に可哀相ですがこれでいいと思います。あとは円安だけなんとかしてくれれば及第点なんですけどね。このままだとさらに買い負けが進みます。ウクライナが可哀相なのはわかってますが、日本も食わなきゃいけませんから。みなさん本音はそうでしょう」

 まさに世界食料争奪戦、戦争の裏で戦争をしている。国際経済は究極のリアリズムだ。そして日本は小国ウクライナが大国ロシアと戦争しているのと同様に、いやそれ以上の超大国、中国とその戦争を経済でしている。激安賛美、客の神格化、円安政策が中国につけこまれている。経済戦争の敗北は後から気づくもの、負ける過程では気づきづらいだけに恐ろしい。

「その自覚、みなさん薄いと思います。彼らは本気ですよ」

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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