決して大げさではなく、日本国民を日々食べさせるのに石油や穀物を航空機だけで運ぶわけにはいかない。巨大船舶でひっきりなしに運ぶしかないのだ。もちろん日本のシーレーンは太平洋が中心だが、ロシアやウクライナ海域、その海域のシーレーンの影響をモロに受ける関係諸国(とくにEU)の船舶輸送が打撃を被れば、ただでさえ上がり続ける船賃がさらに上がる。船の保険料も上がる。世界各国の損保会社はもちろん、日本の大手損保3社も海上保険料の値上げを決めた。それらはすべて日本の買い負けと、さらなる国内の価格高騰、日本人の生活に影響を及ぼす。今年はあらゆる輸入に頼る商品が高騰することだろう。
「その点、中国が一番美味しいんです」
それはそうだが、アメリカはどうか。
「アメリカは中国には本気になれないと思います。中国はうまくロシア、ウクライナ両方と付き合い続けています。アメリカともそうです。ロシアには強気のアメリカも中国には苦言だけ。実際、今日このときも米中航路は順調ですからね。現場知ってる人はわかるでしょうが、米中の仲が(決定的に)悪くなるとか、手を切るとか絶対ないですから。腹立ちますけどね」
これはまったくそのとおりで、米中はトムとジェリーではないが「仲良く喧嘩」しているだけである。もちろんアメリカも自国を犠牲にしてまでロシア問題に首を突っ込む気はない。おそらく中国は彼の言う通り、この戦争を機に一帯一路、シルクロード経済ベルトの覇者となるかもしれない。
中国はこの戦争が始まる前の2月4日、中露首脳会談で年間480億立方メートルもの天然ガスの供給契約を結んだ。また契約には小麦の輸入量拡大も盛り込まれていた。ロシアには世界の4割を産出するパラジウムなど貴重な資源も多い。中国はその強大な経済力でロシアと協力どころか従属させようとしている。ロシアが勝っても負けても、プーチンがどうなろうと、すでに紙くず寸前のルーブルとジャンク級の格付けとなったロシアは中国経済に頼らざるを得ない。中国、いまのところしてやったりだろう。
「日本もその辺はうまくやるべきでしょう。したたかにロシア、ウクライナとも関係を維持するべきです。まだ金出せば調達できる小麦はともかく、さきほどのサハリン2なんて絶対に撤退なんかしちゃだめですよ」