野田聖子(のだ・せいこ)/1960年、福岡県生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業後、帝国ホテルに入社。1987年、岐阜県議会議員(当時最年少)に
──「昭和」に苦しんでいるのは女だけでない?
「うん。たとえば、男性が育休を取りにくい空気とか、そもそもパワハラなんて、昭和にあった上下関係の名残りですよね」
──現在は内閣府の大臣ですが、役所も「昭和」のままですか?
「割とみんなテレワークを活用しています。こないだも私の秘書官の娘さんが受験直前で、父親としてコロナ予防をするためにリモートで出勤していました。大臣室のスタッフも24時間、365日、大臣のそばにいなきゃいけないという時代ではなくなってきています。
事務所に出れば、いい仕事ができるわけでもないから、男性も女性も仕事量を半分くらいにしていいと思うんですよ。それをはばむ壁が、『昭和』という名の岩盤の上にあるのかな。そこがポコッと割れれば、一気に流動性が生まれる。もう、小泉純一郎顔負けの構造改革ができる」
──自民党こそ「昭和」。そこで野田さんが党内で訴えてきた「ジェンダー平等」という概念も、以前よりは浸透してきました。
「男の人たちの間にも、少子化が安全保障上の危機であり、ジェンダー不平等は国家の危機だという理解がだいぶ広がりました。私が小渕恵三内閣で郵政相だった時、経済企画庁長官が作家の堺屋太一さんだったんです。その当時、すごくかわいがってくれて、『聖子ちゃん、ウソも100回言うとホントになるよ』と教えてもらいました。ホントのことだけれど30年間言い続けて、今、やっと聞き入れられるようになってきた。
──逆に、30年も聞き入れられなかった……。
「つい最近ですよね。今でも実態は聞き入れられてなくて、直近の衆院選挙でも自民党の初当選者は30人以上もいたのに女性はゼロ(※参院から鞍替えした2人を除く)。他党も女性が減ったし、こんどの参院選挙の候補予定者も女性がめっちゃ少ない。自民党もまったく変わってないなっていう感じですよね。
まあ、まだまだですけど、出産や子育てとか、母子福祉的な話を男性でも恥ずかしがらずに言えるようになってきた。入り口に来た感じがします。たとえばね、自民党の若手に『ミスター生理』がいるの」
──え!?
「宮路拓馬君(内閣府政務官)。すごいですよ」
(第2回につづく)
【プロフィール】
野田聖子(のだ・せいこ)/1960年、福岡県生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業後、帝国ホテルに入社。1987年、岐阜県議会議員(当時最年少)に。1993年、衆議院議員に初当選。その後、郵政大臣、総務大臣、女性活躍担当大臣、マイナンバー制度担当大臣、幹事長代行などを歴任。現在は、男女共同参画担当大臣。衆院岐阜1区選出、当選10回。
【インタビュアー・構成】
常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版などを経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。『地方選』(角川書店)、『無敗の男』(文藝春秋)など著書多数。政治家の妻や女性議員たちの“生きづらさ”に迫った最新刊『おもちゃ 河井案里との対話』(同前)が好評発売中。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号