芸能

ラッパーの顔を持つ落語家・林家つる子「笑いの感覚は普遍」に感じるロマン

端正な顔立ちなのに、落語に入るとびっくりするぐらい三枚目になれる“落語の国の人”とたい平は語る

注目の落語家・林家つる子。「端正な顔立ちなのに、落語に入るとびっくりするぐらい三枚目になれる“落語の国の人”」と林家たい平は語る

 現在、女流落語家たちが大活躍中。そんな彼女たちのおすすめの落語はどんなものなのか──。コミカルな動きや表情でファンも多いのが、林家つる子だ。落語の魅力を、「江戸、明治、大正期に作られた噺がいまでも笑えるところ。笑いの感覚は普遍だという点にロマンを感じます」と語る。

 そんな彼女が入門編として選んだのは、心がほっこりする人情噺。昔もいまも、人の感情は変わらないと実感させられるものばかりだ。

「子別れ(別名・子は鎹)」は、大学生のときに聴いて衝撃を受けた。

「別れた夫婦が、子供をきっかけに元の鞘に収まる噺。夫婦間や子供への思いなど、共感できる部分がたくさんあるはずです」(つる子・以下同)

 特に、子供のけなげさにぐっとくるという。

「本当は3人一緒に暮らしたいけれど、ダメ亭主に苦労させられた母親を気遣って、その気持ちを隠している子供が、更生した父親に偶然会ってお小遣いをもらうのですが、『おっ母さんには内緒』と約束したため、母親にお金の出どころを問い詰められても、かたくなに父との約束を守るんです」

 当時は、自分の両親を重ねながら聴いたという。

「親って、子供のことを話すとき、すごくうれしそうですよね。『子は鎹』って本当にそうだなあと、親を思いながらしみじみと聴きました」

 同じく酒飲みの亭主が出てくる「替り目」は陽気な噺。

「憎みきれないダメ亭主が、留守のはずの妻のことを『本当はよう、感謝してるんだよ、あいつには』と独白する様子を、まだ家にいた妻がニヤニヤしながら聴くシーンがかわいらしい。『こういう男いるよね〜』と笑えます」

 3つめの「紺屋高尾/幾代餅」は、「職人と人気絶頂の花魁という、結ばれるはずのない2人の純愛物語で、まさに、江戸時代版“究極の推し活”です!」。

 次に、物語の肝となる用語や時代背景を押さえれば、通向けの演目も楽しめるという例として、「三枚起請」という郭話を教えてくれた。

 起請とは、いわゆる結婚契約書のようなもの。心に決めた「まぶ(情夫)」にしか出さないものだが、なんと3人の男が同じ花魁の起請を持っていた。怒った男たちは花魁に詰め寄る。起請を破ると、熊野権現の霊験あらたかなカラスが3羽死に、地獄に落ちるとされていた。

「そのオチが、花魁による『三千世界のカラスを殺し、ぬしと朝寝がしてみたい』という当時の都々逸です。花魁は朝に寝る商売なので、朝うるさく鳴くカラスが憎い。男たちの『起請を破るとカラスが死ぬぞ』という脅しに対し、『もっと書いて殺したいぐらいだ、ゆっくり朝寝がしたいんだから』という開き直りが痛快。起請と都々逸がわかっていると、生き生きとした落語の世界が広がります」

 落語を演じるなか、女性の登場人物の存在が気になるようになっていったという。

「先ほど挙げた『子別れ』をはじめ、ほとんどの落語は男性側の目線で描かれています。じゃあ、女性の気持ちはどうなのか。女性の側にだって葛藤や迷いがあるはずだと思っていました。

 そこで、これまで描かれなかった女性目線の落語をやってみようと思い、二ツ目になってから、おかみさんを主人公にした『子別れ』と、有名な『芝浜』を披露しました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト