スポーツ

広岡達朗氏と江夏豊氏が語る1984年「羽田空港事件」の真相

広岡達朗氏との確執について語った江夏豊氏

広岡達朗氏との確執について語った江夏豊氏

 およそ90年を誇る長いプロ野球史の中では、主力選手同士、監督と選手、コーチと選手といった数々の確執が取り沙汰されてきた。なかでも、稀代のサウスポー・江夏豊氏と名将・広岡達朗氏との確執は、今も語り草になっている。広岡氏、江夏氏らレジェンドたちが球界の裏を明かした本『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)を上梓するノンフィクションライターの松永多佳倫氏が、この確執の裏側をレポートする(文中敬称略)。

 * * *
 1983年オフ、それまで5年連続セーブ王だった江夏豊は、日本ハムから西武へと移籍。しかし西武には1983年に江夏とセーブ王のタイトルを分け合った森繁和がいた。江夏の起用法をどうすべきか──西武の首脳陣を悩ませた。

 1イニングずつのセットアッパー、クローザーという戦術がまだ確立していない時代だけに、ダブルストッパー構想が上がる。当時の西武の監督は、管理野球で常勝チームの礎を築いた広岡達朗。「そもそも、唯我独尊の江夏と管理体制を敷く広岡が揉めないわけがない」と、マスコミはキャンプ前から両者を煽った記事を書き続けた。

 1984年シーズンは、ペナントの行方もさることながらマスコミは「広岡vs江夏」の勃発をどこか期待している節さえあった。だが、二人はそんな挑発には乗らず、キャンプを無事に過ごし開幕を迎えた。

 開幕してから江夏は、長年の勤続疲労のせいか体調が芳しくなく、投げれば打たれる不調が続き、7月12日の登板を最後に胃の検査のため入院した。同月21~24日に開催されたオールスター明けに退院し、練習参加。そして同月26日、遠征のために羽田空港に行った時に事件は起こった。

 羽田空港で、江夏は一軍登録抹消を知らされた。何も聞かされていなかった江夏は、一軍ピッチングコーチの八木沢荘六に喰ってかかった。ここから、江夏は二度と一軍に戻ることはなく、広岡と顔を合わせることもなくなった。

「なんじゃいそれは!」

 江夏は、過去についてとやかく言うことが大嫌いだ。広岡のこともそう。どんなに誘導しても口を閉ざす。それでも意を決して羽田空港事件のことを訊いてみた。

「そう、あのときは知らされてなくていきなり空港で言われたから、当時ピッチングコーチの八木沢さんに『なんじゃいそれは!』って怒鳴ったら縮みあがっとったよ」

 取材時はいつも穏やかに話す江夏が、臨場感を出そうと「なんじゃいそれは!」の台詞に抑揚を入れて発し、半端じゃない迫力が襲った。

「あの人(広岡)が直接、何かを言うってことはなかったから。まあ、キャンプ時から帽子を被れ、玄米を喰えとか決めてきて、『俺らは高校生とちゃうぞ』って不満はあった。それにあの人こそ、監督批判して試合中に帰った第一号だからな」

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン