富士山大噴火でマグマはここまで到達する

富士山大噴火でマグマはここまで到達する

 死者・行方不明者63人を記録し、戦後最悪の火山災害となった2014年の御嶽山(岐阜・長野)の噴火でも、多くの命を奪ったのは噴石だった。ハザードマップの「想定火口範囲」の付近には、青木ヶ原樹海の東の入り口に位置する鳴沢氷穴や富岳風穴もある。噴火から2時間以内に新たな脅威が襲い始める。火口から標高の低い山麓をめがけ、溶岩流が流れ込むのだ。

「溶岩流は溶けた岩石が地表を流れる現象で、富士山の溶岩流は1200度の高温です。火口の下流に向かって流れていき、速度は市街地では人が歩く程度でゆっくりですが、高温のため付近のもの全てを焼き尽くす可能性があります」(吉本氏)

 改定されたハザードマップでは被害想定が大きく変わり、噴火から溶岩到達にかかる時間が大幅に短縮された。

 前出の富士山こどもの国には最短1時間45分で溶岩流が到達する。多くの親子連れで賑わう富士急ハイランドや富士サファリパークにも、噴火から2時間で溶岩流が到達する可能性がある。フジサンケイクラシックが開催される名門ゴルフコースである富士桜カントリー倶楽部の周囲も、噴火から3時間以内に溶岩流の到達が想定されるエリアに含まれている。前出・吉本氏が市街地への影響を注視するのは、山梨県富士吉田市にある「雁ノ穴火口」だという。

「ハザードマップ改定時に追加された火口で、市街地までの距離が1km強しかありません。この火口付近で噴火すると、溶岩流が人口集中地域に短時間で到達するかもしれません。大きな病院や高齢者施設も近いので警戒が必要です」

 雁ノ穴火口付近には、年間100万人が訪れる道の駅富士吉田や東富士五湖道路があり、甚大な被害が懸念される。溶岩流は主要交通網にも流れ込み、国道138号には最短13分、国道139号には最短20分で到達する。新東名高速道路には1時間45分、東名高速道路には2時間15分、東海道新幹線には5時間で押し寄せる恐れがある。

「溶岩流が高速道路や新幹線に到達すれば、日本の東西を行き来する交通手段が寸断され、復興の遅れにもつながります」(吉本氏)

 溶岩の噴出量は、ハザードマップ改定前の7億立方mから13億立方mに上方修正された。最大で57日以内に神奈川県相模原市、小田原市、南足柄市などにも到達し、駿河湾に流れ込む可能性も想定される。

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