国内

壁を壊した男・1993年の小沢一郎 1月24日の新年会「必ず自民党は割れる」

日本政治がもっとも熱く、激しかった1年間を振り返る

日本政治がもっとも熱く、激しかった1年間を振り返る

【1993年の小沢一郎・連載第1回】ロシア・ウクライナ戦争によって、世界は再び激動の時を迎えた。にもかかわらず、日本の政界にその緊張感は見えない。30年前は違った。ベルリンの壁とソ連の崩壊、東西冷戦の終結という激動の波は、永田町にいた一人の男を突き動かした。

「壊し屋」という異名はその後、徐々に否定的な色を帯びていくが、男が55年体制という“もっとも強固な壁”をぶち壊した歴史的事実だけは揺るぎない。その瞬間を間近で見ていたNHKの元番記者・城本勝氏が、秘蔵していた取材メモを開封。日本政治がもっとも熱く、激しかった1年間を振り返る。

 1993年の小沢一郎──それは、日本政治がもう一度、ダイナミズムを取り戻すためのヒントである。(文中敬称略)

 * * *

「怪物と闘う者は、自分自身が怪物にならぬよう気を付けねばならない」

 フリードリヒ・ニーチェ「善悪の彼岸」

初夢

 一九九三年一月二四日(日)午後、東京・世田谷区深沢の住宅街にある小沢一郎の私邸。その事務所を兼ねた広大な屋敷の二階の和室で、小沢は、いつになく寛いだ様子だった。近所の鮨屋から取った鉢盛が並ぶ座卓の前で、ぎこちない素振りで生後四か月くらいの赤ん坊を抱いている。いかつい顔に精一杯の作り笑いを浮かべ、「可愛いねえ。お父さんに似ちゃだめだよ」と猫なで声で言う姿は微笑ましいというよりも、やはり怖い。

 この日小沢邸にいたのは、珍しく「家族連れで新年会でも」という小沢の誘いに応じて訪れた数人の記者とその家族。所属する会社は違い、同時期に小沢を取材してきたいわばライバルだが、現在はみな直接の担当を外れている。私も半年前に小沢番から野党担当になっていた。取材競争とは別にじっくり話を聞こうと時折少人数で小沢を囲んでいた。それでも家族と一緒に会うことなどまずなかった。

 これまた珍しく同席していた和子夫人も、慣れない手つきで赤ん坊をあやす小沢を横目で睨みながら、「せっかくのお休みなのに、ご迷惑でしょう。ごめんなさいね」としきりに気を遣っていた。小沢は前年の竹下派の激しい内部抗争で疲弊した心身を少しでも癒したいと「現役」の番記者ではなく、「OB」で気心が知れた私たちを誘ったのだろう。そう思った私たちも、ひょんなことから米国のワシントンポスト紙に抜かれて、なし崩しに報道が解禁になった皇太子の婚約とか、欧州ではいよいよECの市場統合が始まるとか、二年前心臓病で倒れた小沢が元気になったのも夫人の「愛妻弁当」のおかげだ、などと当たり障りのない話題を選んでいた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
国内統計史上最高気温となる41.8度を観測した群馬県伊勢崎市。写真は42度を示す伊勢崎駅前の温度計。8月5日(時事通信フォト)
《猛暑を喜ぶ人たちと嘆く人たち》「観測史上最高気温」の地では観光客増加への期待 ”お年寄りの原宿”では衣料品店が頭を抱える、立地により”格差”が出ているショッピングモールも
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン