腸管出血性大腸菌は熱に弱いので、肉などの食材はよく加熱すれば安心です。特にハンバーグ、メンチカツなどのひき肉料理は中心部まで火が通り、肉汁が透き通るまで加熱することです。ちなみに私が作ると“煮込み”ハンバーグになります。また、成型肉やタレに漬け込んだステーキ肉なども中心部までよく加熱します。焼き肉では肉用の箸と食べる箸をきちんと分け、水道水や飲んでも大丈夫という水以外は飲まないようにしましょう。

 腸管出血性大腸菌は下痢が止まったあとも4、5日程度は菌が便に排泄されて、その菌が感染源となります(しつこい)。少ない菌でも感染するのを思い出して、手洗いを励行してください。一般的に下痢をしているときは、お風呂は最後に入り、シャワーで済ませるといいでしょう。動物と触れ合った後には、よく手を洗うようにお子さんに教えることも大切ですね。

 気温の高い時期に発生が増えますが、冬季にもみられます。高齢者や乳幼児はかかりやすく重症化しやすいですが、大学生世代でも死亡事故の報告があります。コロナで医療の逼迫などが心配される中、予防できる感染症はとにかく予防するのが大事だと思います。

【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。

※週刊ポスト2022年5月6・13日号

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